情報サービス産業協会(JISA)は3月6日、厚生労働省からの委託事業として取り組んできた「多様就業型ワークシェアリング業種別制度導入モデル事業」の成果を発表した。「これらの成果物を参考にすることで、情報サービス産業を魅力ある産業にしてもらいたい」(JISA)。多様就業型ワークシェアリングは、週5日9時から17時まで会社に出社して仕事する通常の勤務形態以外の働き方全般を指す。在宅勤務や短時間労働などがある。

 今回の委託事業の成果は大きく2点。モデル企業として実際に制度を取り入れた7社の事例の報告書と、7社の事例とともに、情報サービス産業における多様就業型ワークシェアリングを解説したWebサイトの開設である。事例を公開する7社は、イノスインフォメーション・ディベロプメントエー・アンド・アイ・システムNECソフトコア日本ノーベルフジミック

 メインフレームなどの運用アウトソーシングを手がけるインフォメーション・ディベロプメントは、一人分の帳票出力業務を週3日勤務の中高年者2人が分担して実施する「ジョブ・シェアリング」を試験的に実施。61歳と55歳のパートタイマーを雇用した。そのうちの一人が約3000枚の帳票を運ぶ作業で腰を痛め、2週間で退職。その結果、報告書では中高年者の活用に体力面で不安が残ると結論付けた。後にもう一人雇用し、ワーク・シェアリングを再開したが、勤務時間が短いため業務内容の習得に時間がかかったとも報告する。しかし、そもそも3交代制の業務であることもあり、引継ぎや管理負荷の面での心配はなかったという。

 このほか、イノスやフジミックは自社がそれまで適用してきた育児休暇制度や在宅勤務制度について課題や要望を聞くアンケートを社内で実施し、その結果を社内に広めるためのガイドブックを作成した。

 Webサイトは、ニッセイ基礎研究所が主体となって開発した。開発費は300万円程度。経営者向け、現場のマネジャー向け、従業員向けに別々の解説を用意する。JISA会員118社へのアンケートを基に、自社の雇用管理がどのくらい進んでいるのかが評価できるチェック・シートも用意する。チェック項目に答えると、レダー・チャートによって自社と業界平均を比較できる。Webサイトは3月31日までに公開する。

 今回の委託事業は2003年度から05年度までの3年間実施された。実質的な委託費用は7000万円程度である。しかし、各社の事例を見ると、必ずしも3年もの歳月やそれだけのコストが必要だったのか疑問に残る取り組みも散見される。これに対しJISAは「まとめる作業もあり、実質的には丸々3年も使っていない。コストに関しては、余った金額は厚生労働省に返還しているため実費しか計上しておらず、無駄はない。実験的に雇用した人材に対する人件費などに使われた」と説明する。