ソフトバンクは3月4日,英ボーダフォン・グループからボーダフォン日本法人を買収する方向で交渉を進めていることを認めた。一部報道では「1 兆円以上」との買収金額も出ていたが,「交渉していることは事実で,そのテーブルに着くことを合意した段階。スケジュールや買収金額など現時点ではすべて白紙」(ソフトバンク広報室)とコメントした。

 また英ボーダフォン・グループが3月3日,株式の売却について交渉中であることを認めるコメントを発表した。英ボーダフォン・グループは,ボーダフォン日本法人の全株式の97.7%を保有している。ボーダフォン日本法人の2004年度(2004年4月~2005年3月)の売上高は約1兆4700億円,経常利益は約1534億円だった。買収が成立すれば,日本国内では過去最大級の規模となる。ソフトバンクは約1500万人のボーダフォン利用者と全国にまたがる基地局設備を手に入れることになり,NTTグループ,KDDIに対抗できる足場を一気に築くことになる。

 ソフトバンクは元々,子会社のBBモバイルを通じて携帯電話事業に自社のみで進出する予定だった。2005年11月に総務省から認定証を受けており,2007年4月から1.7GHz帯の電波を利用した第3世代携帯電話サービスを開始すると発表していた。同社の孫正義社長は「赤字を出してまで進めることは考えていない。携帯事業は10年20年かけて着実に大きくしていく」と慎重な姿勢を示していた。

 ソフトバンクにとって,既存事業者に匹敵する基地局を展開するには,膨大な資金と時間がかかることが難点だった。基地局敷設については,メーカーからリースなどで機器を確保するベンダー・ファイナンス方式で設備投資を抑える計画だったが,一部でベンダーの離反もささやかれていた。孫社長は 2006年2月10日に開催したの決算発表の席で「MVNO(仮想移動体事業者)を含め,あらゆる選択肢の可能性を否定するものではない」と説明していたが,ここにきて,事業者の買収という大技に出た格好だ。