写真●石島辰太郎氏
写真●石島辰太郎氏
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 「ITエンジニアの実務教育を徹底的に行う,従来と全く異なる大学院を作る。産業界と協調してプロフェッショナル育成の仕組みを作っていきたい」。この4月に開設する産業技術大学院大学の学長になる石島辰太郎氏はこう抱負を語る。

 産業技術大学院大学は首都大学東京が設置した公立の大学院。情報システム・アーキテクトを養成する。アーキテクチャやプロジェクトマネジメントに関する専門知識や方法論を学ぶだけでなく,それらの使い方を身に付けるためのPBL(Project Based Learning)型教育を特徴とする。このために日本IBMや日立製作所,NEC,富士通,ソニーやマネックス証券などで実際にシステム開発にあたっていた人材も教授に採用した。

 「情報システムの知識や方法論だけを習得しても現場でシステム構築はできない。大学院で徹底的にそれらの使い方を“訓練”する」(石島氏)。“訓練”という言葉をあえて使うのは大学では珍しいが,それがこの大学院の実務志向を表している。

 「もちろん単純な仕事の訓練を大学院でやる必要はない。しかし,情報システム構築のような高度な能力が必要な分野は別だ。企業が持っている専門知識や教育ノウハウを,大学院で科学的に体系化し,それを学生に提供していきたい」(石島氏)。

 産業技術大学院大学ではPBLにおいて,学生5人に対して教員3人が指導につくという。教員3人は,企業出身者,大学出身者,スタッフである。年額52万800円と比較的安価な授業料という制約のなかで,PBL実践のために最大限の教員を確保したという。

 プロジェクトは実際のシステム開発案件も対象にする。地方公共団体のシステム案件のRFP(提案依頼書)作成を実際に行ったり評価したりする。また,ITベンダーと一緒に運営諮問委員会を作り,学生の評価方法などについても検討する。「国内の大手ITベンダーが学内にそろったこともあり,自由な雰囲気で開発方法論についても議論していきたい」と石島氏は述べる。