無線LAN機器の相互接続性を検証する業界団体Wi-Fiアライアンスが、無線LANルーターの設定を簡単に実行できる機能の標準化を進めていることが明らかになった。Wi-Fiアライアンスはかねてよりこのような簡単設定を「Simple Config(仮称)」と称して標準化の話し合いを進めていたが、2月初旬に標準化の概略がおおよそ決まったもようだ。年末に発表予定のWindows Vistaも、この簡単設定に対応してくると予想される。簡単設定の標準化に向けたテストプログラムは2006年夏にメーカー各社に通達され、秋には正式にWi-Fiアライアンスから標準化の内容が発表される予定。この簡単設定に対応した無線LANルーター製品は、早ければ2006年8月ごろに発表される可能性がある。

 無線LANルーターでは、ESS-IDや暗号化キーなど、初心者には分かりにくい設定がある。この無線LANの敷居の高さをなくすために、メーカー各社は、ボタン一つで簡単に設定できる機能などを搭載している。例えばバッファローの「AOSS」やNECアクセステクニカの「らくらく無線スタート」などがそれだ。バッファローが2003年に搭載して以降、NECアクセステクニカ、アイ・オー・データ機器、コレガが次々に追従。現在は国内主要4メーカーすべてが独自技術を使った簡単設定の機能を搭載している。

 ただ、現状では接続環境によっては、これらの簡単設定が使えなかったりすることがある。例えばAOSSは親機と子機が両方AOSSに対応していないと利用できない。他にも無線LANルーターによっては2台目のパソコンを接続する際に、簡単設定が利用できず、暗号キーの設定などを手作業でやらなければならないことがある。

 そういったメーカー間での違いをなくし、Simple Configに対応している機器同士であれば、同じ操作で無線LANの設定を行えるようにするのが、Wi-Fiアライアンスの標準化というわけだ。これにより、ユーザーはメーカーや機器による設定作法の違いを知らなくても、簡単に無線LANの設定をできるようになる。さらに、今後はパソコンだけでなくさまざまな家電製品もネットワーク対応が当たり前になる。そうなると、パソコン同様に家電製品でも無線化の動きが出てくるだろう。無線LANの簡単設定が標準化されていれば、家電製品の無線化にも弾みがつくはずだ。

 関係者によると、Simple Configの仕様では出荷時に親機に特定のIDを割り振っておくことで、パソコンにその番号を入力すれば簡単設定ができるようなったり、プッシュ式のボタンで設定ができたりするようになる予定だという。このほか、現在Windows XPが「Windows Connect Now」という名称で実装しているUSBメモリーを利用した設定方法なども、オプションでサポートされる予定とのこと。メーカーがSimple Configに対応するにはこれらの設定項目のいずれか、もしくは複数を満たさなければいけないが、「最初の段階ではSimple Configへの対応条件は低く設定されるのではないか」(関係者)。

Simple Configにどう対応すべきか、頭を悩ます機器メーカー

 2005年12月時点でのマイクロソフトへの取材では、Simple Configへの対応に関しては「ノーコメント」としながらも「現在利用しているUSBを利用する設定はそのまま使えるようにする予定。(もし標準化ということになれば)Wi-Fiで決まった方式にも従っていくつもりだ」と話している。マイクロソフトは公式にはSimple Configへの対応をうたっていないが、複数の関係者への取材によるとWindows VistaがSimple Configに対応してくるの間違いないと見られる。

 Simple Configへの対応は通信機器メーカーにとっては、頭を悩ませる問題だ。各社とも数年かけて普及に勤めてきた、独自の簡単設定の変更を迫られることになるからだ。もちろんSimple Configに従わずに独自の設定方法のみで製品化を続ける道もある。ただ、「Wi-Fiアライアンスがそれを世界標準として打ち出し、さらにもしマイクロソフトがそれをサポートすることになれば事実上Simple Configに対応しないという道は残されていないに等しい」(通信機器メーカー)というのが現状だ。

 独自技術をSimple Configに対応させたとしても、現行製品との互換性を考えると現在採用している簡単設定機能を完全になくすわけにはいかない。とはいえ、設定時に簡単設定機能としてSimple Configかメーカー独自の機能かをユーザーに選んでもらうようなことになると、逆にユーザーの混乱を招きかねない。標準化された機能の搭載によって、「結局真の簡単設定ではなくなってしまう」(通信機器メーカー)という問題が発生してしまう可能性があるのだ。Simple Configにどう対応するかが、メーカーにとっての大きな課題となるのは間違いない。