(写真1)
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 壁一面のディスプレイ、あちこちに取り付けられた小型のセンサー、ディスプレイ付きの家具…。未来の家やオフィスの姿を予感させる空間が、有楽町に出現した。その名は「uPlatea(ユープラテア)」。総務省から委託を受けて進められている研究プロジェクト「Ubila(ユビラ)」のメンバーが作り上げたものだ。

 プロジェクト名のUbilaは、「雲」を意味するラテン語。コンピュータが雲のように我々にとって自然な存在となり、我々の生活をサポートしてくれる世界が目標だという。慶應義塾大学、東京大学、九州工業大学、NEC、富士通、KDDI研究所、KDDIの7機関が参加し、パソコンや家電、無線タグ、センサーなどを利用したネットワークシステムの研究開発が続けられている。uPlateaにはUbilaプロジェクトから生まれたさまざまな研究成果が展示されており、デモを体験できる。

 そのうちの一つが、「直感操作ネットワーク」。慶應義塾大学が開発した「u-Photo」(写真1)というデジタルカメラを使って、複雑な設定なしに複数の機器を接続できるというものだ。機器にはあらかじめ判別のためのマークが付けられており、これをカメラで撮影すると、その機器の制御情報や設定情報などがモニターに表示される。ここで接続したい相手を選べば、機器と機器が接続できる。さらにNECが開発する仮想ネットワーク構築技術と組み合わせ、遠隔地にある機器同士を接続することもできる。例えば自宅のDVDレコーダーに蓄積された映像を会社で見たい場合、自宅のDVDレコーダーと会社のプロジェクターをそれぞれu-Photoカメラで撮影し、両者を接続すればよい。

 部屋にはちょっと変わった素材で作られた家具も置かれている。ディスプレイ付きのパネルを自由に組み合わせて作られたものだ(写真2)。このパネルは「u-Texture」と呼ばれるもので、タブレットPCをベースに、無線タグの読み取りや赤外線通信機能、物体の傾きを検知するセンサーを搭載する。これを使って好みの形に家具を組み立てると、その形に応じたサービスを家具が自発的に提供してくれる。

(写真2)

 例えばラックの形に組み立てるとする。各パネルがセンサーを使って自身の傾きを検知し、寝かされているのか、立てられているのかを判断する。さらに赤外線通信によって周辺のパネルの状況も把握し、自分の役割に応じたサービスを提供する。例えば寝かされたパネルが無線タグの読み取り、立てられたパネルがディスプレイ、といった具合だ。デモでは、無線タグの付いたCDケースを寝かされたパネルに置くと、その内容が立てられたパネルに表示された。さらにそのCDに収録されている楽曲をパソコンの中から探し出し、再生した(写真3)。次にPDAを置くと、該当する楽曲のデータがPDAにコピーされた。

(写真3)

 これ以外にも、普段の生活の中で使われることを想定した未来技術が目白押し。その日の予定などに合わせて服装のコーディネイトをしてくれるシステムや、ユーザーの現在位置に応じて最適なネットワーク接続先を選択するシステムなどがその一例だ。プロジェクトの中心メンバーである慶應義塾大学環境情報学部の徳田英幸教授が「卵から生まれたばかりのひよこの状態の技術が集まっている」と語る通り、どれも実用化までにはしばらく時間を必要とするものばかり。ただコンピュータが埋め込まれた家電が身の回りにあふれ、センサーの小型化や高性能化も急速に進みつつある現状を考えると、何年か先にこんな光景が一般家庭で見られてもおかしくない、という気分にさせられる。

 プロジェクトでは、この場を使ってユビキタスネットワークの実証実験を進めていく。さらに「一般の人にも公開する。この場を通じて、ユビキタスネットワークの世界を身近に感じてほしい」(徳田教授)。今後、メールやWebページを通じた予約制で一般の見学を受け付ける予定だ。