米Microsoftは2月22日(米国時間),「Windows Vista Enterprise」の技術評価版(CTP,Community Technology Preview)をリリースした。Windows Vista EnterpriseはOSライセンスのソフトウエア・アシュアランス(SA)を購入している企業ユーザーにのみ提供される予定のエディションで,一般ユーザーが購入できるエディションと比較して暗号化機能や管理ツールなどが強化されている。このCTPは,Windows Vistaのベータ・テスターとMSDN(Microsoft Developer Network)やTechNetの有料購読者にのみ提供される。

 Windows Vista Enterpriseには,TPMセキュリティ・チップを使用したディスク・ボリューム全体の暗号化機能や,仮想マシン「Virtual PC Express」などが搭載されることが明らかにされている。今回Microsoftは,Windows Vista Enterpriseに搭載される管理ツールやシステム管理機能などについても,詳細を公開した。

■展開計画ツール

・Enhanced Business Desktop Deployment 社内でWindows Vistaを展開する際に役に立つツールや文書。OS展開中の処理(サーバーからクライアントにOSのファイルやディスク・イメージを配布する処理)をモニタリングするツールや,OSの展開方法を解説した文書などが含まれる。

・Application Compatibility Toolkit(ACT) アプリケーション互換性ツールキットの新版で,2月版CTPでのバージョン番号は「4.1」(Windows XP SP2用のACTのバージョンは「4.0」)である。Windows Vistaではバージョン番号は「5.0」になる予定。ACTは,古いバージョンのOS用アプリケーションをWindows Vistaで動かすための互換性機能を提供するツール。互換性機能を提供する対象アプリケーションを定義するデータベースや,各アプリケーションに対して提供する互換性機能を定義するデータベースなどを管理している。なお,ACTはWindows XPで初めて搭載された。

■OS展開のテスト,システム構築,実施ツール

・Windows Automated Installation Kit 下記で紹介する「Windows System Image Manager」「Windows Deployment Services」「Windows Preinstallation Environment(PE) 2.0」の総称。

・Windows System Image Manager Windows Vistaを複数のクライアントに展開する際に使用するディスク・イメージの作成やカスタマイズ,設定変更などをおこなうためのツール。OS展開用のディスク・イメージは,ひな形となるパソコンのハードディスクをコピーして作成する。Windows XPの場合,コピーしたディスク・イメージをそのまま配布するため,展開先のパソコンのディスク内容は,ひな形のパソコンと全く同一になる。Windows Vistaの場合,ひな形からコピーしたディスク・イメージに対して様々な変更を追加でき,展開先のパソコンのシステム構成に応じたOSの展開が可能になる。

・Windows Deployment Services 次期サーバーOS「Longhorn Server」(開発コード名)に搭載されるOS展開サービス(Remote Installation Servicesの後継バージョン)。ネットワーク経由でディスク・イメージを展開できる。

・Windows Preinstallation Environment(PE) 2.0 CD-ROMからブートできる軽量版Windows Vista。OS展開用のディスク・イメージをパソコンにコピーする際に,コピー先のパソコンをWindows PE 2.0でブートする。Windows PE 2.0を使うと,ディスク・イメージをパソコンにコピーする際にデバイス・ドライバを追加できるようになる。またWindows PE 2.0を使ってパソコンをブートして,障害を復旧させたりファイルを救出したりできるようになる。

・User State Migration Tool 3.0 ユーザー設定やデータを旧バージョンのWindowsからWindows Vistaに移行するツール。暗号化機能などが追加される。

・Enhanced imaging technologies 「Ximage」という新しいディスク・イメージ形式や,従来の「Windows Imaging」というディスク・イメージ形式を作成できるツール。ディスク・イメージを複数のCDに分割したり,圧縮形式を変更したりできる。

■展開以外のクライアント管理ツール

 なおWindows Vistaでは,デスクトップ管理機能も強化される。Microsoftによれば,以下のようなツールや機能が搭載されるとしている。

・Microsoft Management Console(MMC) 3.0強化版 マイクロソフト管理コンソール(MMC)の新バージョン。Windows Server 2003 R2に搭載されているMMC 3.0よりも,さらにデスクトップ管理が容易になっているとしている。

・グループ・ポリシーの強化 Active Directoryでクライアントを管理する「グループ・ポリシー機能」が強化される。設定項目が追加され,外付けストレージのセキュリティ設定などが,グループ・ポリシー経由で施せるようになる。例えば,外付け接続ストレージを「一切使えなくする」「書き込みだけ禁止する」といった具合に制御できるようになる。Windows XP SP2では,USBストレージのみ制御できた。

・イベント・ログの強化 イベント・ログに記録できるOSの情報が増えるほか,イベント・ログ用の標準ドキュメントの量も増加する。またイベント・ビューアも刷新され,イベント・ログをソートしたり,フィルタリングしたりするのが容易になる。

・タスク・スケジューラの強化 Windows Vistaの新しいタスク・スケジューラでは,システム設定の変更もスケジューリングできるようになる。

■クライアント管理以外の新機能

 その他,以下の機能が今回のCTPに初めて実装された。これらはWindows Vista Enterpriseの専用機能ではない。Microsoftは今回のCTPについて「feature complete(機能がすべてそろったバージョン)」と説明している。

・Windows Sidebar and Gadgets 画面の脇に「サイドバー」と呼ばれる新しいツールバーが実装される。「Gadgets」は,サイドバーで実行できるミニ・アプリケーションである。

・Welcome Center OSの初期設定を施すための新しい設定ツール。