写真1:eTRON仕様のICチップ搭載クレジット・カードを手に説明する坂村健氏。このカードにアレルゲン(アレルギー原因物質)といった個人情報を格納する
写真1:eTRON仕様のICチップ搭載クレジット・カードを手に説明する坂村健氏。このカードにアレルゲン(アレルギー原因物質)といった個人情報を格納する
[画像のクリックで拡大表示]
写真2:「コープさっぽろ」での実証実験で使われた端末。ICチップ搭載クレジット・カードをカード・リーダーに差し込み,商品のバーコードを読み取っている様子
写真2:「コープさっぽろ」での実証実験で使われた端末。ICチップ搭載クレジット・カードをカード・リーダーに差し込み,商品のバーコードを読み取っている様子
[画像のクリックで拡大表示]
写真3:商品にアレルゲン(アレルギー原因物質)が含まれているかどうかを表示する。アレルゲンの情報は個人情報のためICチップ内部に格納し,情報の漏洩がないよう認証通信を行っている
写真3:商品にアレルゲン(アレルギー原因物質)が含まれているかどうかを表示する。アレルゲンの情報は個人情報のためICチップ内部に格納し,情報の漏洩がないよう認証通信を行っている
[画像のクリックで拡大表示]
写真4:日本橋三越本店での実証実験に使う端末。消費者が,2次元バーコードに記載したucodeに基づき商品の詳細情報を閲覧できる
写真4:日本橋三越本店での実証実験に使う端末。消費者が,2次元バーコードに記載したucodeに基づき商品の詳細情報を閲覧できる
[画像のクリックで拡大表示]
写真5:弁当のように,複数の食品を組み合わせた加工品も扱える。弁当の原材料となっている牛肉を,産地や個体まで追跡することができる
写真5:弁当のように,複数の食品を組み合わせた加工品も扱える。弁当の原材料となっている牛肉を,産地や個体まで追跡することができる
[画像のクリックで拡大表示]
写真6:携帯電話機のバーコード・リーダー機能を使い食品の情報を引き出すことができる
写真6:携帯電話機のバーコード・リーダー機能を使い食品の情報を引き出すことができる
[画像のクリックで拡大表示]

 T-Engineフォーラムは,「ユビキタス食品情報基盤システム」の説明会を2006年2月22日に開催した。農林水産省が2005年度から取り組んでいる「ユビキタス食の安全・安心システム開発事業」の一環として全国4カ所の食品小売店で実施中の実証実験の内容と狙いを報告した。東京大学教授の坂村健氏らが提唱する「ユビキタスID」のコード体系「ucode」を,食品流通の現場でのトレーサビリティに応用したものである(Tech-On! 関連記事1関連記事2関連記事3=Tech-On!専用の無料ユーザー登録が必要です)。

生産から販売まで一貫管理

 今回の実験のポイントは大きく2つある。1つは,食品の生産・加工・流通・販売までの全段階でユビキタスIDに基づく食品情報の一貫管理システムを開発したことである。「食品トレーサビリティを無線タグで実現したシステムなどはほかにもあるが,その多くは店舗内部に閉じている。生産段階からのトレーサビリティを実現した例は聞いたことがない」(説明を担当した坂村氏)。

 小売店で販売する食品について,生産者や流通経路を追跡したり,万一食品に問題があった時にはさかのぼって調べるために,ユビキタスIDを使う。消費者が,購入した食品の詳細情報を,店頭に設置した端末機器や,携帯電話機を使って調べることができる。

 食品流通のシステム化で難しい点は,途中で素材から商品への加工が行われること,それに商品単価が低いため,現状ではタグ1つあたりのコストも極力抑える必要があることである。この課題を乗り越えるため,今回は計量器・包装機と2次元バーコード印刷機能を組み合わせたシステムを新たに開発した。バーコードをラベルに印字するやり方であれば,現時点では無線タグに比べはるかに低コストで実現できる。また自動印字なので人手による管理よりも信頼性が高まる。

 もう1つのポイントは,アレルゲン(アレルギー原因物質)などの個人情報をeTRON仕様のICチップにより管理し,食品トレーサビリティと組み合わせて利用するシステムを開発したことである。つまり,購入する商品が自分にとってのアレルゲン(アレルギー物質)を含むかどうかを店頭で調べられるサービスを実施した。「このようなサービスは,世界でも最初だと思う」(坂村氏)。

全国4店舗の食品小売店で実証実験

 今回,店舗での実証実験を行ったのは,以下の3組織である。

 コープさっぽろ新道店,美園店の2店舗では,2006年1月25日~2月23日にかけて実証実験を行っている。eTRON準拠のICチップを使ったクレジット・カード(コープさっぽろ組合員証と兼用)を使い,個人情報と食品トレーサビリティを組み合わせたサービスを受けることができる。実験では,前述のアレルゲンの有無のチェックと,購買履歴の管理の2種類のサービスを提供した。

 サミット三鷹市役所前店では,2006年2月13日~23日にかけて実証実験を実施中である(関連記事)。店舗に置いた専用端末を使い,食品の素材に関する情報を閲覧できる。この店舗での実験のポイントは,前述したように食品加工の工程で使う計量器・包装機と ucodeを組み合わせたことである。食品を計量・包装する際,食品情報と結びついたucodeをバーコードとして印字する機能を実現した。この機能は,寺岡精工の計量器に組み込む形で実現した。

 日本橋三越本店では,2006年2月23日~3月2日まで,複数の食品を組み合わせた加工品(弁当など)のトレーサビリティ・システムを運用する。商品カードや品質管理ラベルなど,従来から利用しているラベルに,新たにucodeに対応した2次元バーコードを印刷する。例えば,弁当に使われている牛肉について,個体にまでさかのぼる情報を,店頭に置いた専用端末または市販の携帯電話機を利用して閲覧できる。

 これらのシステムは,2005年9月~12月にかけて開発した。2005年12月~2006年2月にかけて生産・流通実験を行い,今回の店舗での実証実験に結び付けた。