通信と放送の融合について講演する松原聡東洋大学教授。竹中平蔵総務大臣直轄の私的懇談会の座長を努める
通信と放送の融合について講演する松原聡東洋大学教授。竹中平蔵総務大臣直轄の私的懇談会の座長を努める
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松原教授の講演資料。光回線の独占会社には否定的な考えを示した
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 情報通信政策フォーラム(ICPF)は2月22日,東京都内で通信と放送の融合をテーマとしたシンポジウムを開催した。

 最初の講演者として松原聡東洋大学教授が登壇(写真上)。松原教授は竹中平蔵総務大臣直轄の私的懇談会「通信と放送の在り方に関する懇談会」の座長を務めており,その発言が注目されている。「竹中懇談会」では,NTTがどう在るべきかを中心とした通信の在るべき姿を検討している(関連記事)。
 
 松原教授は2月21日の竹中懇談会の内容を受けて一部の新聞が「懇談会がNTTを解体方針」と報じたことに「誤解が生じている。大胆な改革が必要だが,NTTの解体を目指すものではない」(松原教授)として議論の趣旨を説明した。「96年にNTTの現在の形態が決まってから既に10年が経過している。持ち株会社を廃止して,現在の東西NTT,ドコモ,NTTコミュニケーションズをそれぞれ個別の会社にすればいいというものでもない。県内と県外や,固定と携帯を分けて置くことがFMCの時代に意味があるのか」と述べた。

 また,通信制度を議論する総務省の懇談会にソフトバンクが提案した「ユニバーサル回線会社」については「ソフトバンクからは明快な問題提起。相当魅力的だ」と一定の評価を与えた(関連記事)。ただ「光ファイバを建設するような独占的な特殊会社は作らない。1社が独占で敷設していくことには効率性などの問題があるだろう。懇談会ではこの形を採らないこととした」(松原教授)と言う(写真下)。

 ソフトバンクの孫正義社長が示した「光1回線を月額690円」について松原教授は「1企業の計算を信じることはできないので,詳細な試算をお願いした」。別の試算では「1000円から800円の間になるとの数字がはじき出されている」と明かす。

 放送事業のあり方についてもふれた。「地上放送は大変化が起きており,伝送路が多様化する。IP通信で見れば全国に送信が可能なのに,わざわざ制限することに意味があるのか。根本的に見直す」として,現在の県域やブロックごとに閉じた地上放送の送信・営業体制にメスを入れる考えを示した。

 松原教授は2月21日の竹中懇談会直後の記者会見で「NTTの組織の抜本的な見直しが必要だ。NTTが今のままでいいという構成員は皆無だった」と述べている。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション