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ニュース

【集中連載 通信大改革の行方】(3)
光ファイバの攻防で浮かび上がるNTT,KDDI,ソフトバンクの思惑

市嶋 洋平=日経コミュニケーション 2006/02/22 日経コミュニケーション
写真1 総務省総合通信基盤局の谷脇康彦料金サービス課長 「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」の実働部隊トップ
写真1 総務省総合通信基盤局の谷脇康彦料金サービス課長 「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」の実働部隊トップ
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写真2 総務省が2月1日に開催した「IP懇談会」 大手通信事業者トップのほか,業界関係者や報道陣が詰めかけた
写真2 総務省が2月1日に開催した「IP懇談会」 大手通信事業者トップのほか,業界関係者や報道陣が詰めかけた
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写真3 IP懇談会に参加するNTT和田紀夫社長(左から1番目),ソフトバンク孫正義社長(左から2番目),KDDI小野寺正社長(右から1番目)
写真3 IP懇談会に参加するNTT和田紀夫社長(左から1番目),ソフトバンク孫正義社長(左から2番目),KDDI小野寺正社長(右から1番目)
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写真4 ソフトバンクの孫正義社長がIP懇談会で提案した光ファイバ事業の分離に伴う大幅値下げ案
写真4 ソフトバンクの孫正義社長がIP懇談会で提案した光ファイバ事業の分離に伴う大幅値下げ案
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 次世代通信サービスのインフラとなる「光ファイバ」を巡る大手通信事業者の攻防が激化している。NTT,KDDI,ソフトバンクの3大グループが,総務省の懇談会を舞台に自説を主張。互いに1歩も譲らぬ構えを見せている。

 きっかけは昨年秋のこと。総務省が2005年10月28日に設置した「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」(IP懇談会)に端を発する。目的は次世代の通信制度を議論すること。2004年から2005年にかけて旧来の「電話接続料」,電話をひろくあまねく提供するための制度「ユニバーサル・サービス基金」の議論が一段落。これを受けてIP懇談会では,固定電話を中心とした従来型の通信政策・制度にそぐわない,モバイルやIP電話,ブロードバンドといったサービスが主役となりつつあることに対応する(関連記事1) 。通信行政全般を所管する須田和博総合通信基盤局長が主宰し,米国帰りの政策通である谷脇康彦料金サービス課長が実働部隊のトップとして腕を振るう最強の布陣を敷く(写真1)。

 第1回,第2回と無難に進んだIP懇談会は,2006年に入ると状況が一変。次世代の通信制度に意見を述べるはずが,光ファイバとNTTの在るべき論に意見が集中した。

「光ファイバは月690円で提供可能」と孫社長

 2006年2月1日。IP懇談会の第3回会合ではKDDIの小野寺正社長やソフトバンクの孫正義社長が,NTT東西地域会社から光ファイバ回線を含むアクセス部門の分離を要求(写真2,写真3)。別会社として運営することを要求した(関連記事2)。

 ソフトバンクの孫社長は分離後の会社の具体像まで披露した。「NTTは光ファイバの事業がもうからないと言う。本当にもうからないのであれば,事業を分離すればいい」と述べた後,間をおかずに回線会社の運営や採算にまで言及し始めた。

 孫社長は参加した委員を引き込むかのごとく,明快な口調で自説を展開した。「全国の6000万回線を光化する『ユニバーサル回線会社』を,民間が資本参加して設立すべきだ」と机を叩きながら興奮した面持ちで主張。さらに「私の試算だと,光ファイバを1回線月額690円で提供できる」(孫社長)と驚くべき数字をぶち上げた(写真4)。この根拠として「NTTは3000万回線の光化に2兆円を投じる。(過疎地を含む)全国を光化するには,この3倍の6兆円があればいい」(孫社長)と説明。この6兆円の資金を2.2%の金利で借り入れし,20年間で返済する条件で690円という数字を弾き出している。

 KDDIの小野寺社長も「アクセス会社は(NTT以外の)民間でやっていくべきだろう。当社も応分の出資をしたい」と孫社長の考えに同調した。

地道な規制緩和を唱え続ける和田社長

 NTT持ち株会社の和田紀夫社長は約3時間を要した会合の間,小野寺社長や孫社長の仕掛けた議論にはほとんど乗らなかった。ただ一つ,孫社長の「月690円の光ファイバ」発言に対して,「そんな数字で出来るなら,方法を教えていただきたいくらいだ」と首をかしげながら答える程度だった。

 その一方で和田社長は,従来からの持論である光ファイバの規制緩和要求をより具体化させた。その一つが,NTTの電話局とユーザーの建物の間を結ぶ,いわゆる加入者系光ファイバの他社への貸し出し料金についてだった。和田社長は「実績と予測コストの間に大幅なかい離がある。適正なコストを回収することができない」と発言。光ファイバの他社への貸し出し料金の値上げに向けた見直しを要求した。

 従来は,光ファイバの貸し出し条件や料金を定めた「開放義務」を撤廃してほしいとの一点張りだったが,ここにきて方針を転換した格好だ(関連記事3)。東西NTTは開放義務によって,他事業者にサービス抜きの光回線単独で料金を公開して貸し出したり,東西NTTの社内部門に貸し出す場合と同じ料金で他事業者へ貸し出すといった制約が課されている。具体的には光ファイバを1本あたり月額5074円で貸し出すことが義務付けられている。

 こうした開放義務の撤廃についても,現実的な案を提出した。NTTが総務省に提出した文書には「開放義務の撤廃に時間がかかるようであれば,電柱の架空配線区間をまず規制から除外していただきたい」と記してあった。

 つまり,NTT電話局から地中の配線区間は,今まで通り開放義務に従って他事業者に提供する。ただし,その先の街中の電柱上は各事業者で自由に回線を敷設する,もしくは東西NTTの“言い値”で貸し出すといったことを要求しているのだ。

“光を持たざる”KDDIやソフトバンクを襲うリスク

 ソフトバンクやKDDIなどNTTの競合事業者が光ファイバに執着するのは,「光を持たざるリスク」が現実のものになってきたからだ。

 FTTH(fiber to the home)サービスはKDDIやソフトバンクも展開しているが,加入者数の推移はあまり芳しくない。東西NTTや関西電力系のケイ・オプティコムといった光ファイバを保有する事業者がキャンペーンで思い切った価格を打ち出す一方,KDDIやソフトバンクはユーザーに訴求できない価格のまま“放置”しているからだ。東西NTTやケイ・オプティコムが月額5000円を下回る料金を打ち出してくるのに対し,KDDIやソフトバンクは月額7000円前後の設定にとどまる。

 KDDIやソフトバンクといった自社で光ファイバを持たない事業者は,競合事業者である東西NTTなどから光ファイバを借りる必要がある。この仕入れ値がベースのコストとなるため,東西NTTのような思い切った料金設定ができない。そのためユーザーが集まらないという悪循環に陥っているのだ。

 KDDIが東京電力系通信事業者のパワードコムと合併し東電と提携したのも,光ファイバやFTTHの展開を視野に入れた動きだ(関連記事4)。ソフトバンクもKDDIと同様に電力系の通信事業者と交渉した形跡がある。

FTTHに急シフトするブロードバンド市場

 これと並行して,ブロードバンド市場が変質しつつある。2005年末,ADSL業界4位のアッカ・ネットワークスの加入者数が,四半期ベースで純減となった(関連記事5)。個人向けのADSLサービスの加入者が同年9月末からの3カ月間で1万5000減った。他のADSL事業者も純増はなんとかキープしたものの減速基調だ。ソフトバンク・グループの「Yahoo! BB」では,2005年9月から12月の間の純増数は前年同期の約5分の1まで落ち込んだ。東西NTTやイー・アクセスも加入者の伸びに急ブレーキがかかっている。

 ADSLの事業者が顧客獲得に費用をかけないことで,事業の採算は良くなる。料金の回収に専念すれば済むからだ。しかしこの採算向上も短期的なもの。FTTH全盛期が明らかに近づいているためである。例えば,東西NTTのFTTHサービス「Bフレッツ」は2005年12月の時点で281万加入。同年9月末に比べて45万加入もの上乗せとなった。これは前年同期の2倍以上のペース。つまり,BフレッツなどFTTHサービスへの乗り換えが,ADSLの加入減を引き起こしているという構図になる。事業者がこれまでに投資したADSL設備や顧客獲得に要したコストを回収する前に,ユーザーが解約して乗り換えてしまっている。

総務省,まずは光ファイバの料金見直しから

 総務省は光ファイバの見直しをIP懇談会の大きな議題として据えている(関連記事6)。ブロードバンドだけでなく,電話や放送など光ファイバがあらゆるサービスのインフラとなっていくと考えているからだ。

 IP懇談会の最初の会合で谷脇料金サービス課長は「現在,家庭やオフィスへの東西NTTの光ファイバは将来の需要を見越した価格で料金を設定している。これを引き続き用いるのが適当かどうか考えたい」との見解を示した。これは歴史的な出来事と言える。総務省は2001年に東西NTTの光ファイバ料金を決めて以来,その見直しに言及することは一切なかったからだ。いわばタブー視されていたものを,総務省自ら「変えてもいいよ」と公言したのだ。

 この総務省方針にNTTグループのある幹部は言葉を選びながらこう語る。「光ファイバの料金見直しを検討してくれるのであれば,ありがたい。しかし総務省はそこまで考え方を変えていないのではないか」。一方で現状の料金の話になると,「今は実際のコストよりも低い採算割れの価格で,ライバルである他事業者に提供している。投資のリスクは全部NTTが負っている。これをなんとかしてもらわなければならない」とまくしたてる。

 これに対して谷脇課長は「光ファイバの料金見直しは,あくまでもテーブルにつくといった段階。NTTは今後,光ファイバをどの程度のコストでどの程度の心線数を敷設していくのか。詳しいデータを提出してもらわないと議論にならない」と注文を付ける。

 また谷脇課長は幾分怒りを宿した目でこうも語る。「現状の光ファイバの料金は,NTTの予測『2007年に550万回線』で算出している。最近,NTTは中期経営戦略で2010年に光3000万回線を掲げている。この両方の数字の関係をきちんと説明してほしい。3000万が単なる目標では通じない」。仮にNTTの光ファイバが予測よりも多く普及するようであれば,コスト次第では現在の貸し出し料金を値下げする必要すら生じるからだ。

 ボールはいったんNTT側に投げられた格好だが,NTT側がこれに応じるかどうかは未知数だ。光ファイバの敷設にまつわるコストや心線数など詳細なデータはNTTにとって極めて重要なもの。仮に公表した結果,総務省がNTT側に有利な「値上げ」と見るのか正反対の「値下げ」と見るのかも分からないからだ。

 一方,小野寺社長や孫社長が要求する「光ファイバを含む回線事業の分離」の議論をどのように扱うのか。この点には総務省幹部は口をつぐむ。2006年1月に立ち上がった,竹中平蔵総務大臣直轄の私的懇談会「通信と放送の在り方に関する懇談会」では「NTTの組織や独占性を含めた通信の在り方」を主要なアジェンダとして取り上げるからだ(関連記事7)。

 竹中大臣は自身の懇談会とIP懇談会を連携させる考えを示しており,その動向に注目が集まっている。両懇談会とも2006年5~6月に方針が固まる。NTT,KDDI,ソフトバンクの光ファイバを巡る攻防は,この前後に大きな山場がありそうだ。

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