ソフトバンクBBが,光ファイバと高速DSLのハイブリッド・システム「FTTR(fiber to the remote terminal)」を神奈川県内で実験中であることが明らかになった。
 
 FTTRはユーザー宅の近くまで光ファイバを引き,そこから宅内までをVDSLなどの高速DSLでつなぐ形態をとる。DSLシステムは電話線の距離が長ければ長いほど,信号が減衰し速度が低下する性質がある。FTTRでは光ファイバで中継することで速度低下をできるだけ抑える。現在,国際電気通信連合で標準化中のVDSL2を使えば,上り下りとも100Mビット/秒のシステムを実現できる可能性がある。FTTRには光ファイバとDSLシステムの変換ポイントが必要となるが,電柱の上または地上などに建設したラックに収容するもよう。
 
 複数の関係者によれば「実験は2006年2月に始まった」。また,ある関係者によれば「マンションの一室に光ファイバを引き込み,これを使って実験している。既存のDSLシステムの干渉の度合いや設置上の問題点などを検討している」という。
 
 ソフトバンクの孫正義社長は2月10日に開催された決算説明会の中で「FTTHに匹敵するような革新的な技術を現在実験中。実験が成功すれば,全面的に展開したい」と発言した。実験中のシステムがFTTRかどうかの明言は避けたが,この実験を指している可能性が高い。

訂正:2006年2月13日

初掲載時のタイトルは「ソフトバンクBBやイー・アクセスなど,光と高速DSLのハイブリッド・サービスを実験中」,本文第1文は「ソフトバンクBBやイー・アクセスなど複数の通信事業者が協力し,光ファイバと高速DSLのハイブリッド・システム「FTTR(fiber to the remote terminal)」を神奈川県内で実験中であることが明らかになった。」でしたが,イー・アクセスの申し入れにより訂正しました。イー・アクセスの申し入れ内容は「実験の主体はソフトバンクBBで,実験に協力しているわけではない。公衆網に対して流れるVDSL信号が,自社のADSLに及ぼす干渉を確認するため,ソフトバンクBBのFTTR実験での干渉評価実施を要請してきた。その結果,当社が機器を持ち込み干渉確認実験を行ってもよい,との了解をソフトバンクBBから得た。実験は2月中に実施する予定。なお,現時点でFTTRに取り組む予定はない」(広報部)。以上,お詫びして訂正します。