米MicrosoftのコーポレートバイスプレジデントSanjay Parthasarathy氏
米MicrosoftのコーポレートバイスプレジデントSanjay Parthasarathy氏
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 米MicrosoftのコーポレートバイスプレジデントSanjay Parthasarathy氏が,横浜で開催中の開発者向け会議「Microsoft Developers Conference 2006」で講演するために来日,ITpro編集部との会見に応じた。Parthasarathy氏は同社でデベロッパー&プラットフォームエバンジェリズムを担当している。会見の要旨は以下の通り。

---かつてMicrosoftはOSと開発ツールの会社だったが,その後Officeとサーバー製品が加わり,最近はBI(ビジネス・インテリジェンス)や運用管理などエンタープライズ向け製品のリリースが目立つ。今後,あまり利益にならない開発者向けツールや情報の提供が減らないか心配だ。

 我々が顧客満足度を高めるための基本的な戦略は,顧客の「生産性(Productivity)」「柔軟性(Flexibility)」「接続性(Connectivity)」の3つを向上させることだ。開発者は,生産性と言えば開発生産性を思い浮かべるが,経営者にとっては意思決定の速度になる。企業全体の生産性という意味で言えば,むしろ意思決定の方が重要だろう。「柔軟性」は,企業をとりまく状況の変化に適切に対応する能力のことで,これも規制に対するもの,競合に対するものなど様々な種類がある。接続性も,B2B,B2C,B2Eなど何種類か挙げられる。

 Microsoftは,これらを企業全体として向上させるためにXMLとWebサービスを主要なテクノロジとして位置付け,様々な製品を出荷してきた。最近エンタープライズ向けの製品が目立つのは,むしろこれまで弱かった部分を補強するためとも言える。決して開発者を軽視しているわけではない。

---Visual Studio Team Systemはこれまでになく高価だ。これもエンタープライズ志向に見えるが。

 これも先の生産性,柔軟性,接続性をトータルで向上させようとした結果だ。Visual Studioは元々開発者のためのツールだったが,今では運用担当者やアナリストの生産性も向上させる必要がある。開発ターゲットとして携帯情報端末を含めたり,地理的に離れている開発者同士でもチーム開発をできるようにしたりするなど,柔軟性,接続性も向上させた。価格が高いのは機能が大幅に向上した結果だ。高価といっても,IBM Rational製品群などと比べればまだまだ安い。

---最近は開発者コミュニティ/オープンソース陣営で新しい技術/流れが生まれることが少なくない。Microsoftに限らず,商用ソフトベンダーは後追いで自社製品に取り入れている。こうした技術/流れを素早く取り入れるために,何らかの組織的な取り組みをする計画はないのか?

 複数の調査会社のレポートによれば,現在米国での.NET開発者の割合は50%を超え,Javaよりも多い。2002年3月に.NETを出荷開始して以来,短期間でここまで普及した理由はいくつかある。技術自体が素晴らしい,システム開発が抱える様々な課題に幅広く対応できる,といった点に加えて,開発者コミュニティを巻き込む方針を採ったことも大きいと考えている。.NETの新技術/仕様の多くは正式リリース前にTechnology Previewを配布し,コミュニティから寄せられた意見を取り入れてきた。最近でも,Webアプリケーション開発用フレームワークのRuby on Railsなど,オープンソース・プロジェクトで参考にすべきものはたくさんある。

 ただ,こうしたプロジェクトの多くは,幅広い課題を解決するようには作られていない。携帯情報端末など様々なハードウエアに対応できない,というのがその例だ。我々は,オープンソースのプロジェクトや技術をそのまま取り込むのではなく,それらを参考により良いものを開発できればと考えている。Webアプリケーション・フレームワークについては,現在.NET Frameworkの開発者の一人であるAnders Hejlsbergが作業を進めているところだ。

---最後に,日本の開発者に向けて一言。

 ウーン。一言(one word)では難しい(笑)。あえて言えば「XML」だ。two wordsなら「XML everywhere」かな。