米MicrosoftのWindowsクライアント・プラットフォーム&ドキュメント担当ゼネラル・マネージャであるマイケル・ウォーレント氏
米MicrosoftのWindowsクライアント・プラットフォーム&ドキュメント担当ゼネラル・マネージャであるマイケル・ウォーレント氏
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写真1 ユーザーが見たいウィンドウを探しやすいように,ウィンドウのサムネイルを表示する機能を備えた。
写真1 ユーザーが見たいウィンドウを探しやすいように,ウィンドウのサムネイルを表示する機能を備えた。
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写真2 [コントロール・パネル]で「language」と検索すると,[地域と言語のオプション]のコントロールが出てくる。
写真2 [コントロール・パネル]で「language」と検索すると,[地域と言語のオプション]のコントロールが出てくる。
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写真3 エクセル・ファイルの中身がアプリケーションのアイコン付きでサムネイル表示される。
写真3 エクセル・ファイルの中身がアプリケーションのアイコン付きでサムネイル表示される。
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写真4 印刷イメージに近い「XPS(XML Paper Specification)」。
写真4 印刷イメージに近い「XPS(XML Paper Specification)」。
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写真5 XAMLで作ったWebページ。右下の「Next Page」をクリックして次のページに進む。
写真5 XAMLで作ったWebページ。右下の「Next Page」をクリックして次のページに進む。
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写真6 写真5のWebページの画面を小さくした状態。テキストの量が画面(1ページ)に収まる分量に減っていることが分かる。
写真6 写真5のWebページの画面を小さくした状態。テキストの量が画面(1ページ)に収まる分量に減っていることが分かる。
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写真7 Expressionで開発したアプリケーションの例。UIはXAMLで記述されている。
写真7 Expressionで開発したアプリケーションの例。UIはXAMLで記述されている。
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写真8 WPF/Eのデモ。左側の画面がWPF/Eの仮想エンジンで,右側の画面がXAMLのコード。Adobe Illustratorのベクター画像をXAMLに変換して表示している。
写真8 WPF/Eのデモ。左側の画面がWPF/Eの仮想エンジンで,右側の画面がXAMLのコード。Adobe Illustratorのベクター画像をXAMLに変換して表示している。
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 マイクロソフトは2006年2月2日,ソフトウエア開発者会議「Microsoft Developers Conference(MDC) 2006」の基調講演で,現在開発中である「Windows Vista」のデモを実施した。今回は開発者会議ということもあり,プレゼンテーション・サブシステム「Windows Presentation Foundation(WPF)」ならびにWPFでユーザー・インターフェース(UI)を記述するXAMLが強調された。

 デモを行ったのは,米MicrosoftのWindowsクライアント・プラットフォーム&ドキュメント担当ゼネラル・マネージャであるマイケル・ウォーレント氏。ウォーレント氏が最初に見せたのは,エクスプローラに関する変更点。

 Vistaでは写真1のように,多数のウィンドウを開いている状態でも,ユーザーが見たいウィンドウを探しやすいように,ウィンドウのサムネイルを表示できる。サムネイルには,どのアプリケーションの画面か分かるよう,各アプリケーションのアイコンが右下に付けられる。

 Vistaのエクスプローラで特に強化されたのは,検索機能である。スタート・メニューの一番下や,エクスプローラの右上にある検索ボックスでは,ファイル名だけでなくファイルのメタ・データやファイルの全文,OSのコンポーネントなどを検索できる。

 例えば「calc」と入力すれば,OSのアクセサリの「電卓」と,「calc」という単語を含んだ文書が表示される。また,コントロール・パネルの右上にある検索ボックスでは,OSの設定画面を呼び出すことも可能だ。デモでは「display」や「language」といった単語を検索して,コントロール・パネルの画面設定画面や言語設定画面を呼び出した(写真2)

 「flank」といった人名で検索すると,flankが作った文書ファイルが呼び出される(写真3)。アイコンはすべて文書のサムネイル画像になるほか,どのアプリケーションで作成したものか右下にアイコンが表示される。また文書のメタ・データは,エクスプローラの下部に一覧表示されている。

 Windows Vistaでサポートされる新しい文書形式である「XPS(XML Paper Specification)」についてもデモがあった。XPSは開発コード名が「Metro」と呼ばれた文書形式で,PDFのように印刷イメージに近い形で,文書が保存される(写真4)。文書の拡大縮小や,ページの一覧のサムネイル表示などにも対応している。

XAMLなら「スクロールの無いWebページ」が実現可能

 Windows Vistaは,新しいプレゼンテーション・サブシステム「Windows Presentation Foundation(WPF)」を搭載する。WPFでは,アプリケーションのUIといった画面情報を,XMLベースの「XAML」で記述する。ウォーレント氏はまず「XAMLで作ったWebページ」をデモしてみせた。

 HTMLで記述したWebページは,文字が画面に収まりきらない場合,画面をスクロールする必要がある。ウォーレント氏は「スクロールは無駄な作業であり,ユーザーは文字を読む時間の20%を(スクロールした結果文書がどこから始まるか確認する)読み直しに費やしている」と主張する。

 XAMLを使ったWebページでは,スクロールという行為がなくなり,紙のページをめくるのと同じように,ページをクリックして次のページに移動する(写真5)。1ページに収まる文字などをあらかじめ決める必要はない。ウィンドウのサイズに応じて,1ページに収まる文字や画像が自動的に配置される(写真6)。「XAMLをWebページに使うことによって,ドキュメントをよりユーザーに読みやすい形で提供できる」(ウォーレント氏)という。

「XAMLで作ったリッチなUIは生産性向上に寄与する」

 マイクロソフトは,アプリケーションのUIデザイナー向けのツールとして「Expression」という開発ツールを出荷する予定。今回は,ExpressionでUIのXAMLを作ったデモ・アプリケーションも披露された(写真7)。これは,病院において患者の情報を閲覧するアプリケーションである。「ユーザーはグラフを重ねて表示したり,立体視したりできる。これらのグラフなどは,Expressionのスタンダード・コントロールだけで作成できる」(ウォーレント氏)という。同氏は「3次元のUIを使うと,情報をより明確に理解できるようになり,生産性が上がる。今後は,このようなリッチなUIを持つ業務アプリケーションが次々と登場するだろう」と主張した。

 WPFに関してはもう1つ「Windows Presentation Foundation Everywhere(WPF/E)」も披露した。ウォーレント氏は「WPF/Eは,WPFのUIを様々なデバイスに表示させる,ごく小さなソフトウエア・パッケージである」と説明する。WPF/Eの描画エンジンは5Mバイト程度のサイズで,Mac OS XやUNIX,PDAなどに提供される。写真8はAdobe Illustratorのベクター画像をXAMLに変換し,WPF/Eの評価用エミュレータで表示したものだ。エンコード・エンジンの容量は400Kバイトだという。WPF/Eでのアプリケーションは,UIはXAMLで,ロジックはJavaScriptで開発する。このUIもExpressionで開発可能だ。

クライアント管理のしやすさを重視

 ウォーレント氏は冒頭,Windows VistaのUIを紹介する前に,意外なことを述べていた。ウォーレント氏は「開発者は新しい製品を開発するときに,UIの使いやすさや『何か変わったこと』に気を取られがちだが,Vistaは全く違う発想で開発を始めた。Vistaで最初に開発を始めたのは,セットアップ(インストール)・テクノロジーである。企業のシステム管理者が,より簡単にクライアントを管理できることを重視しているのがVistaだ」と語った。

 Windows Vistaでは,OSのインストールがファイル・コピーより高速なイメージ・コピーで実行できるなど,インストールや設定がより容易になる。ただし,Vistaのセットアップ・テクノロジーが完成するのは,2006年夏に公開が予定される「ベータ2」まで待たなくてはならない。ウォーレント氏の発言は,Vistaが「見た目だけ変わったOS」ではないことを強調したものであった。