米国のWall Street Journal紙はこのほど,欧州連合(EU)の独占禁止法(独禁法)関係部門が米Microsoftに送った機密文書を入手したと報じた。そこには「Windowsソース・コードを開示しても制裁措置の和解条件は満たせない」との警告が書かれていた。同社は1月25日に,制裁措置への対応の遅れに対する批判を回避するため,Windowsソース・コードの一部を開示すると大々的に発表した。発表の際,同社の顧問弁護士はソース・コード開示を「思い切った行動」と呼んでいた。

 「Windowsのソース・コード開示は,これまで要求も歓迎もされたことがない」。ある英国のコンピュータ科学者は,報告書のなかでEUの制裁措置に対するMicrosoftの不器用な試みをこう評した。EUの独禁法当局である欧州委員会(EC)の委員Neelie Kroes氏が,「ソース・コード開示の提案を聞いて驚いた」と発言したことを覚えているだろうか(関連記事)。EUの警告という新事実から,Kroes氏がどのような観点で発言したのかが分かる。EUが同社に「ソース・コードの開示では不十分」と伝えていたからこそ,あのように驚いたのだ。

 Wall Street Journal紙が引用した機密文書のほとんどは,Microsoftが制裁措置の要求に従っているかどうか判断する上で,EUがどのような取り組みをしてきたかという内容で占められている。これまでMicrosoftは,Windows Server製品と通信する際に使うソフトウエア・プロトコルについて,1万2000ページ以上の技術文書を提供してきた。ところがEUの技術担当者は,こうしたプロトコルで通信する極めて単純なアプリケーションの作成に42時間以上費やしたが,何一つ動かすことができなかったという。担当者らは同社の文書を「全くの役立たず」と呼び,見出しや図面,さらにはセクションのタイトルすらない点を批判した。報告書の中には,「米IBM,米Novell,米Oracle,米Sun Microsystemsなどの企業の開発者も,全員がMicrosoftの文書が使い物にならないと指摘した」という記述もあった。

 MicrosoftがEUの要求に応えられなければ,1日につき240万ドルの罰金を2005年12月15日までさかのぼって支払うことになる。EUは,「こうした条件は,2005年3月の時点で明記してあった」と述べている。