米司法省(DOJ)は1月23日に提出した訴状のなかで,2001年にまとまった独占禁止法(独禁法)訴訟の和解文に匹敵する厳しい表現を使い,和解条件となった項目の履行が遅々として進んでいないとして米Microsoftを批判した。訴状には,「競合他社に技術情報を開示するという約束に対し,同社があいまいな態度を取り続けている」との懸念が記されていた。同社はさきごろ,技術情報の提供を2006年後半に延ばした。これは,当初の予定よりも約9カ月遅れている。

 Microsoftの米国における独禁法訴訟の問題は,この数カ月のあいだ情勢が二転三転している。裁判官のColleen Kollar-Kotelly氏は2005年10月に「Microsoftは和解条件の順守に時間をかけ過ぎている」と述べた。しかし11月になると,同氏の発言は「軌道に乗ったようだ」と変化した。そして今回DOJは,Microsoftによる必要な技術情報の開示が「大幅に遅れている」(DOJ)とした。

 正直なところ,これに驚く人などいるのだろうか?誰からみても,Microsoftが同じ状況にあるほかの企業と同様,独禁法違反に対する和解内容の履行に時間をかけることは明白だったはずだ。

 DOJの訴状に対する同社の反応は予測できた。広報担当者は以下のように述べた。「懸念を払拭するため,当社は懸命に作業を進めている。問題解決に必要なリソースを,とことん投入していく」

 ところが,同社の「独占禁止法違反ドラマ」は,欧州でも同じペースで進行している。欧州連合(EU)の独占禁止法当局である欧州委員会(EC)は12月22日に,Microsoftに対して「制裁措置への対応が遅れている」と警告した。同社が1月23日に行った発表によると,ECは同社に猶予を与え,回答期限を2月15日に延期した。それまでECは,「Microsoftが競合他社への技術情報開示を始めなければ,1日当たり200万ユーロ(約245万ドル)の制裁金を科す」と脅していた。

 何が延期の理由なのだろうか?ECは「(警告が)クリスマス休暇の直前だったから」としている。