写真1 左がシャッターを開いた状態のExpress5800/OfficeRackServer。右は閉じた状態である。
写真1 左がシャッターを開いた状態のExpress5800/OfficeRackServer。右は閉じた状態である。
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写真2 「机と同じ高さなので,プリンタ台として向いているだろう」(NECの渡辺一敏主任)。
写真2 「机と同じ高さなので,プリンタ台として向いているだろう」(NECの渡辺一敏主任)。
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 NECが2月に出荷を開始する「Express5800/OfficeRackServer」は,オフィス・フロア専用をうたうラックマウント・サーバーである。専用のサーバー・ルームを持たない中小企業などでは,システム管理者が泣く泣くサーバーをオフィス・フロアに設置しているケースも多い。そのときに問題になるのが,サーバーの騒音や熱である。Express5800/OfficeRackServerはシャッターなどを装備することで,騒音水準を40dB(図書館内の騒音レベル)に抑えているという。商品企画を担当したクライアント・サーバー販売推進本部の渡辺一敏主任に,製品の開発意図などを聞いた。

Q:オフィス・フロア専用のサーバー・ラックを開発しようと思った動機は?

[渡辺一敏氏] 現在,ほとんどの中小企業には,専用のサーバー・ルームがない。そのため多くのサーバーやラックが,通常の業務を行うオフィス・フロアに置かれているのが実情だ。実際に,調査会社のテクノ・システム・リサーチが実施した調査でも,中小企業が現状のPCサーバーに対して抱いている不満として,「音がうるさい」「ちり・ほこりが気になる」「発熱で部屋が暑くなる」「設置場所を取る」という回答が多く見られた。サーバーをオフィス・フロアに置いている証拠といえるだろう。

 われわれは中小企業の悩みに答えるために,これまでも大きさが省スペース型パソコン程度である「スリム・サーバー」や,プロセッサの冷却に水冷方式を採用して騒音を抑えた「水冷サーバー」,ラックの1Uのスペースにサーバーを2台設置できる「1Uハーフ・サーバー」といった,設置環境性を重視したPCサーバーを開発してきた。これらの売れ行きは順調で,2005年度は3機種合計で1万台の販売を見込んでいる。

 これらの実績を基にオフィス・フロア専用ラックの需要があると判断し,今回の製品化に至った。

Q:オフィス・フロアにサーバーが置かれるのはなぜだろうか?

[渡辺氏] 日本のオフィス賃料が異常に高いためだと考えている。東京の都心の年間床賃料は,1平方メートル当たり年間9万5200円(国土交通省の調査)であり,米国ニューヨークの同5万5132円(同)の約2倍である。これだけ賃料が高いと,専用のサーバー・ルームを設けることは非常に難しい。

Q:Express5800/OfficeRackServerを「オフィス・フロア専用」と主張する根拠は,静音性だけなのか?

[渡辺氏] 通常のサーバー・ラックと大きくことなるのは,シャッターを設けるなどして音を逃さないようにしたことだ(写真1)。それ以外にも配慮した点がある。まず,通常のサーバー・ラックは,サーバーのメンテナンスを背面から行うことが前提で設計されている。そのため,通常のサーバー・ラックをオフィスに置く場合は,サーバー・ラックの奥に人が入れる隙間を設ける必要がある。

 一方で,Express5800/OfficeRackServerは壁面に近付けた設置が可能だ。これは,メンテナンスがすべて前面から実行できる「1Uハーフ・サーバー」(奥行きが通常の半分のサイズであるNECのラックマウント型サーバー)専用のラックだからだ。

Q:確かに,シャッターを閉じた状態だと非常に静かだ。しかし,これだけ静かだと内部がきちんと冷却されているのか心配になる。実は記者は,NECが販売する「水冷パソコン」の初期からのユーザーなのだが,過去の水冷パソコンは静音性を重視するあまり,きょう体がかなり密閉されていた。ハードディスクの温度が常に高いので,いつも不安に思っている。サーバーの密閉性を上げるのは故障率の点で良くないと思うのだが,どう考えるか。

[渡辺氏] シャッターを閉めた状態でも,シャッター下部から吸気するようになっている。また,壁面に近付けてラックを設置しても,サーバー内部を冷やす空気がきちんと抜けるように,通気口なども設けている。

 1Uハーフ・サーバーは,発熱量の小さいPentium Mを搭載するので,他のサーバーに比べて電気料金や発熱の問題で有利だ。しかし,サーバーの熱源はプロセッサだけではない。サーバー全体を冷やすファンも搭載しているし,通気性の問題は考慮している。

Q:そもそも,わざわざサーバー・ラックをオフィス・フロアに置く必要があるのだろうか。NECのスリム・サーバーのようなタワー型サーバーを何台も置いた方がコスト的に有利ではないのか?

[渡辺氏] サーバーの運用に必要なのは,何もサーバー本体だけではない。無停電電源装置(UPS)やネットワーク・スイッチをどこに置くのかが問題だ。中小企業の現場では,床に置いたUPSやスイッチを社員が蹴飛ばして壊してしまう事故が,頻繁に起こっている。サーバー・ラックにはUPSやスイッチを収納するスペースもあるし,何よりサーバーの増設が容易だ。

 またExpress5800/OfficeRackServerは,標準的な事務机と同じ高さになっている。レーザー・プリンタ用の台としてぴったりだと考えている(写真2)

Q:オフィス・フロアにラックを置いて大丈夫なのだろうか。床は抜けないのか?

[渡辺氏] Express5800/OfficeRackServerには,最大で7台のサーバーとUPSを2台,スイッチを1台搭載できるが,すべて足してもサーバー・ラック込みで200Kg程度だと思う。上にプリンタを置いたとしても,この程度で床が抜けることはないだろう。

Q:サーバーは基本的に,セキュリティの保たれた(鍵のかかった)サーバー・ルームで運用するべきだと思うのだが,その点はどう考えているのか?

[渡辺氏] シャッターが施錠できるようになっており,サーバー本体に触れられないようにはなっている。