KDDIの小野寺正社長
KDDIの小野寺正社長
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 KDDIは2006年1月24日,2005年度第3四半期(2005年10月1日~同12月31日)の決算を発表した。第3四半期までの累計の売上高は2兆2301億8900万円(前年同期比1.6%増)で,累計の営業利益は2575億9400万円(同6.2%増),累計の経常利益は2558億7900万円(同8.6%増),累計の当期純利益は1580億700万円(同2.5%増)だった。固定通信事業の営業損失が438億円に及んだが,移動通信事業(auとツーカー)の業績が売上高で前年同期比7.5%増,営業利益が同30.7%増と好調だったため,連結業績では増収増益となった。

 移動通信事業の第3四半期までの累計売上高は1兆8457億円(前年同期比7.5%増),営業利益は2996億円(同30.7%増)だった。一方,固定通信事業の2005年度第3四半期までの累計売上高は4358億円(同1.8%減),営業損失は438億円(前年同期は83億円の黒字)だった。

 今回の発表に合わせて,通期の業績見通しも上方修正している。2006年3月期通期の見通しは売上高が3兆410億円(従来見通しに比べて650億円増),経常利益が2870億円(変更なし)である。従来の見通しと比較して固定通信事業の営業赤字が210億円拡大するが,逆に移動通信事業の営業黒字が210億円増大するとして,連結での営業利益の見通しは変更しなかった。

 移動通信事業の営業黒字が拡大する理由については,auのARPU(1加入者当たりの月間平均収入)の見通しを従来の6810円から7000円に変更したことや,移動通信事業の累計契約数が2528万件と従来見通しよりも25万件増えること,ツーカーからauへの同番移行(同じ電話番号でのキャリア移行)が70万台に達することなどを挙げた。固定通信事業の営業赤字が拡大する理由については,「メタルプラス」の累計契約数が170万件と従来見通しよりも50万件少なくなることを挙げている。

 当期純利益の見通しは1870億円で変わらない。ただし,ツーカーのPDC設備の減損損失が期初予想と比較して900億円,固定系国内伝送路の減損損失などが期初予想と比べて100億円増えており,当期純利益に対しては600億円のマイナス効果を与える見込みだ。その一方で,2006年1月1日付けでパワードコムと合併したことにともない,法人税などの軽減分600億円が当期純利益に対してプラスになった。これらのマイナス効果とプラス効果が相殺されるため,全体での当期純利益の見通しに変更がない。

 なおパワードコムの合併が売上高の増加にほぼ寄与していないが,これについてKDDIの小野寺正社長(写真)は「KDDIはこれまで,移動通信網用にパワードコムの回線を大量に利用していた。合併によってこの売り上げが,企業内取引として相殺された」と説明している。

WINのユーザー数は前年同期比3倍に

 移動通信事業全体の契約数は,2005年12月末の時点で2469万5000件(前年同期比10.4%増)となった。auの契約数は2157万7100件(同15.0%増)で,内訳はCDMA 1X WINが675万件(同232.2%増),CDMA 1Xが1383万3000件(同6.5%減),cdmaOneが98万7000件(同48.9%減)となった。ツーカーの契約数は312万5000件(同13.2%減)である。

 2005年度第3四半期におけるauのARPUは,au全体では7090円(音声5200円,データ1890円)で前年同期より100円減少している。しかし音声ARPUがが270円減だったのに対して,データのARPUは170円増えている。データのARPUが増えたのは「CDMA 1X WIN」への移行が進んだためだ。2005年12月末のWIN契約者数は675万件で,そのうちの81%が定額データ通信サービスを利用している。そのため,WINのARPUは2005年度第3四半期で9680円(音声が6220円,データが3460円)と高い。小野寺社長は「WINのARPUは加入者が増えるに従って落ちているが,CDMA 1XのARPUと比較すると高い水準にある。今後,WINの契約数が増えるに従って,au全体でのデータのARPUは増加するだろう」と見ている。

 auの解約率は低い水準が続いている。2005年度第3四半期の解約率は1.11%で,前年同期比0.26ポイント改善している。1.11%という解約率は,過去最低の水準である。通期の解約率は1.20%を見込んでいる。

 ツーカーからauへの同番移行に関する情報も公開された。2005年10月から2005年12月末までの累計移行件数は35万件で,2006年3月期通期では70万件が移行する見通しである。移行先は1Xが55%でWINが45%。au移行前のARPUが5710円であるのに対して,au移行後のARPUは6750円に上昇しているという。

 固定通信事業は苦戦が続いている。小野寺社長は「メタルプラスに関しては,基本料金の2カ月無料キャンペーンを実施しているため,売り上げに貢献しづらくなっている」と述べる。メタルプラスの契約数は2005年12月末で116万5000回線であり,2006年3月末の時点では170万件になるとの見通しである。

 2005年度第3四半期の累計でない単期の業績は,売上高が7614億1700万円(前年同期比5.3%増),営業利益が909億2400万円(同13.6%増),経常利益は909億6000万円(同14.6%増),当期純利益が565億6900万円(同25.8%減)であった。当期純利益が前年同期比で減少したのは,2004年第3四半期に,PHS会社DDIポケット(現ウィルコム)の株式を売却したことにともなう特別利益が276億2800万円あったためである。