米グーグルは2006年1月17日(米国時間),同社の「Google Talk」がインスタント・メッセージング(IM)のプロトコル仕様「XMPP」に完全準拠したと発表した。XMPPは,米アップル・コンピュータのIMソフト「iChat」も採用。XMPP準拠のIMソフトはコンシューマ市場を中心にダウンロード数を伸ばしている。グーグルは当初からXMPPを採用し,拡張仕様の策定を主導してきた。今回の声明で,米マイクロソフトや米IBMなどが採用するIMプロトコル「SIMPLE」との間にある相互接続性の“壁”に揺さぶりをかけた格好だ。

 XMPPは,米ジャバーが開発したIMソフト「Jabber」のプロトコルを拡張したもの。在席確認やメッセージの交換規約といった基本仕様をやインターネットの標準を策定するIETF(Internet Engineering Task Force)がRFC3920~3923として標準化した。現在は非営利団体のJabber Software Foundationがオープンソースの形態で開発を継続。2005年12月には,ピア・ツー・ピア(P2P)形式の通信や音声のやり取りの手法を定めた拡張仕様をGoogle Talkの実装をベースに策定した。

 一方のSIMPLEは,「SIP for Instant Messaging and Presence Leveraging Extensions」の略。文字通り,IP電話システムのプロトコルとして普及しているSIPがベースとなっている。こちらもIETFにおいてRFC3856~3858として標準化済み。マイクロソフトやシスコなどが拡張仕様の策定に積極的に関与している。結果として,XMPPが主にコンシューマ市場において一定の地位を築いているのに対し,後者はマイクロソフトやIBMの企業向けサーバー・ソフトへの統合によって企業システムにも浸透している。

 現時点では相互接続性がないXMPPとSIMPLE。ただ米AOLが2005年4月に発表したXMPP/SIMPLEへの両対応など,相互接続に向けた動きは既にある。グーグルは今回の声明に際して,「IMとVoIP(voice over IP)に電子メールなみの相互接続製をもたらすための第一歩」とコメントしている。

(高橋 秀和=日経コミュニケーション