会見する西室泰三 会長兼社長
会見する西室泰三 会長兼社長
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 「午後2時40分に取引市場を全面停止してご迷惑をおかけしたことを、市場開設者としてたいへん申し訳なく思っている」。東京証券取引所の西室泰三 会長兼社長は、1月18日午後7時から開催した記者会見の場でこう述べた。システムを計画停止したことについては、「適切な判断だった。(立会終了時刻の)午後3時まで取引を続けていたら、システムがパンクしていたかもしれない」との見解を示した。

 東証は1月18日の午後2時40分、東証1部・2部・マザーズ市場の株式、CBおよび交換社債全銘柄について取り引きを強制的に停止した。ライブドアの強制捜査開始による影響で売り注文が殺到し、約定件数がシステムの許容範囲に迫ったため、システムの計画停止に踏み切った。

 東証のシステムは、1日の約定件数が450万件、同注文件数が900万件まで処理できる設計になっている。ただ、安全を期すため、1日の約定件数が400万件を超えるか、同注文件数が850万件を超えた場合、システムを計画停止させて取引市場を強制停止させると決めている。

 昨年までは、これだけの処理能力で十分だった。例えば、昨年12月で約定件数が最も多かった日で、1日当たり359万件。400万件には届いていない。ところが、ライブドアの強制捜査開始をきっかけに、約定件数は1月17日に382万件まで急増。1月18日はついに400万件を超え、438万件まで達した。

 西室会長兼社長は、「この件数は極めて異常な数字」としながらも、「異常事態はしばらく続く可能性がある」と判断。1月19日からしばらくの間、午後の取引開始時刻を午後12時30分から午後1時に遅らせ、1日の取引時間を30分短縮することを決めた。さらに、1日の約定件数が400万件を超えた場合、あるいは同注文件数が850万件を超えた際は、「あらかじめお知らせした上で再び売買停止に踏み切る」(同)。1日当たりの約定件数が350万件を下回り、同注文件数が750万件を下回る日がしばらく続き、異常な状態が収まったと判断するまで、取引時間の短縮を続ける。

 景気の回復やインターネット取引の増加を受け、約定件数や注文件数は今後さらに伸びる可能性がある。そのため東証は、今年1月30日に予定している約定システムの刷新で、システムが1日に処理できる約定件数を450万件から500万件に増やす。「さらにチューニングを施して処理性能を高める」(深山浩永執行役員)。同注文件数は、「年内の早い時期に、現在の900万件から1500万件まで拡大させる」(同)。

 「1月30日の約定システム刷新や注文件数の拡大といったシステム増強を前倒しすることはできないのか」という質問には、「無理だ。トラブル防止のためにも、検証は十分にやりたい。申し訳ないが、しばらくの間は我慢していただきたい」(西室会長兼社長)と訴えた。

 東証は今回の判断について、「計画停止」を強調する。しかし、取引市場の終了時刻を繰り上げたことにより、一部の投資信託運用会社では株式の終値を取得できず、投資信託の基準価格算出が遅れるという事態が起きた。

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