NTTの和田紀夫社長
NTTの和田紀夫社長
[画像のクリックで拡大表示]

 2006年1月17日,NTTは和田紀夫社長(写真)の定例会見を開催した。その中で,和田社長は今後の同社のバックボーン・ネットワークのIP化について説明。「映像などがネットワークを使って大量に流通し始めることを想定すると,ネットワークを拡充する設備投資が必要になる」とした上で,「(その投資に対する)リターンをどういう形で確保できるのか」との懸念を表明した。今から2年ほど前,ピア・ツー・ピア型のファイル交換アプリケーションがネットワークの帯域を占有する事態が問題となったが,こうした“インフラただ乗り論”が再燃した格好だ。

 やり玉に挙がったのが,無償のIP電話ソフト「Skype」である。和田社長は2005年11月中旬から12月上旬,イギリスのBTや,米国のAT&T,ベライゾン,ベルサウスなどの大手通信事業者を訪問して意見交換した際のエピソードを披露。「Skypeが,単なる音声やテキストでのやりとりだけではなく映像も扱うようになっている。各事業者とも(ネットワークの拡充に対して)同じ危機感を持っていることが分かった」と共通認識であることを説明した。

 現在,日本では無料のインターネット放送が急速に普及しているが,こうした動きに冷や水をささないかとの質問に対し,和田社長は「確かにそういう面はある」としながらも,「ネットワーク自身が容量的にも耐えられなくなってくる」とした上で,「ネットワークの使われ方が高度化するとセキュリティやギャランティ(帯域保証)を求められるようになってくる。われわれはもっとすごいネットワークを作っていかなければならない。こういうことを考えると(ネットワーク・インフラの“ただ乗り”について),大きな課題として議論しなければならない」との意見を投げかけた。

 会見ではWiMAXやライブドアの強制捜査についても触れた。WiMAXは,「ドコモは研究開発能力,技術に厚いものがある。そこを柱として(WiMAX)やっていこうと思っている」と説明した上で,NTTグループ内で,どの事業者が周波数の割り当てに立候補するかについては,「グループ内で検討を深めていきたい」とするにとどめた。

 ライブドアの強制捜査開始については「びっくりしている。報道の範囲でしか分からないが,あの大きさの株式分割をするということは,われわれの常識からすれば異常だとは考えていた」とコメント。「ICT(Information and Communication Technology),IT技術が持っている経済,社会に与えるインパクト,必要性,発展性に対しては疑う余地はない」とし,時間が経過すれば株式市場は落ち着くとの見方を示す一方,「経営手法の問題で,市場全体に不信感がぬぐえないことになってくると大きな問題だ」とした。

(大谷 晃司=日経コミュニケーション