写真1●上部2台がIsilon IQ Accelerator。クラスタに追加して15秒待つと,何の設定もせずにクラスタ全体の性能が向上する
写真1●上部2台がIsilon IQ Accelerator。クラスタに追加して15秒待つと,何の設定もせずにクラスタ全体の性能が向上する
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 東京エレクトロンは2006年3月にも,NAS(Network Attached Storage)装置をクラスタ接続することによって容量とデータ転送速度を高めるクラスタ型ストレージ「Isilon IQ」の新機種の出荷を開始する。クラスタ全体のデータ転送性能を高めるための専用装置「Isilon IQ Accelerator」である。画像・映像データなど大容量のデータを高速にアクセスする用途に適する。価格は未定。開発会社は米Isilon Systems。

 Isilon IQは,PCベースのNAS専用装置をノードと見なし,個々のノードをサーバー間インターコネクトであるInfiniBandスイッチを経由して接続し,ノードの集合体であるクラスタ全体で単一の論理ファイル・システムを実現する機器である。クラスタ全体を1つの巨大なNASとして利用でき,ノードの追加によって簡単に容量や性能を上げられるという特徴を持つ。日本法人のアイシロン・システムズでマーケティング本部長を務める明石昌也氏は,「性能を追求するSANと容量を追求するNASの中間に位置するが,クラスタ構成を変えることによって性能の追求も容量の追求も可能」と説明する。

 個々のノードは3.2GHz動作のIntel Xeonを搭載したPCであり,FreeBSDをベースに独自開発した分散ファイル・システム・ソフト「OneFS」を搭載している。個々のノードは密結合ではなく独立した処理を実行するため,ノード数を増やすことによる性能の劣化は少ない。「42ノードまでの検証実験ではリニアに性能が上がった」(アイシロン・システムズの取締役営業本部長の関根悟氏)。各ノードはそれぞれ,どのデータがどのノードのどこに書かれているかを知っており,インターコネクトはファイルを構成するデータの転送に利用する。

 ファイル格納時には,ファイルを自動的にデータ分割して各ノードに分散配置する。つまり,ノードをディスク・アレイのように利用する。RAID構成は,単純なミラーリング(RAID-1)から,ディスクを連結しつつパリティ・データを分散配置するRAID-5,RAID-5をベースに1つのデータに対してパリティ・データを2つ作ることで同時に2つのノードに障害が発生しても復旧できるRAID-6までの機能を備える。

 個々のノードとなる装置のラインアップは搭載するディスクの容量に応じて全5種類がある。高さ2Uのきょう体にディスクを搭載する4機種は出荷済みで,ディスク容量を増やす目的に適した最上位機種Isilon IQ 6000シリーズは6Tバイトのディスクを搭載。容量よりもデータ転送速度を重視した最下位機種Isilon IQ 1920シリーズは,1.92Tバイトのディスクを搭載している。ディスク容量を除いた仕様は4機種で共通である。

 今回新たに出荷を始めるIsilon IQ Acceleratorは,他の4機種からディスクを省いたモデルであり,クラスタに追加することで,容量はそのままにデータ転送速度だけを向上させる。例えば,容量1.92TバイトのIsilon IQ 1920を3ノード構成で使っている場合のデータ読み出し速度はベンチマークの結果270Mバイト/秒であるが,このクラスタにIsilon IQ Acceleratorを3ノード追加すると,合計で2倍の6ノード構成となり,データ読み出し速度は2倍の540Mバイト/秒に向上する。

 Isilon IQ Acceleratorの意義は,容量を増やす必要はないがデータ転送速度を高めたい場合に,クラスタのノード数を安価に増やせることである。純粋にノード(CPU)を増やせばクラスタ全体のデータ転送速度が向上する。他の4機種と比べてディスクを搭載しないため安価ですむほか,高さを他の半分の1Uに収めたことでラックの設置容積も減らせる。