N900iLを使ってフリー・アドレスを実現したTGアイネット
N900iLを使ってフリー・アドレスを実現したTGアイネット
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 東京ガスの情報関連子会社であるティージー情報ネットワーク(TGアイネット)は2005年11月,オフィス移転を機にNTTドコモのFOMA/無線LANデュアル端末「N900iL」やシスコシステムズ製IP電話機,ソフトフォンを組み合わせたIP電話システムを導入した。シスコシステムズのIP電話システムとN900iLの連携には,ユニアデックスのIP電話製品・サービスである「AiriPワイヤレスIP電話ソリューション」を利用。「既にユニアデックス社内で同種のシステムが稼働している」(ティージー情報ネットワーク・技術部技術グループの岡崎猛課長)ことが採用の決め手となった。

 N900iLはシスコ製IP電話機とは異なり,呼制御のプロトコルにSIP(session initiation protocol)を採用している。そのため,TGアイネットは,別途SIPサーバーを導入。ユニアデックスのソリューションを利用してシスコシステムズのIP電話サーバー「CallManager」で呼制御している固定IP電話機やソフトフォンから,N900iL側への転送処理などを可能とした。

 TGアイネットは移転前からシスコシステムズのIP電話システムを導入し,フリーアドレスの職場環境を実現していた。だが,IP電話機は有線の固定タイプを使っていたため,席が一部固定化するなどの状況もあった。そこで,移転を機に既存のIP電話システムの資産も生かしつつ,同社が推進するワークスタイルの変革を進める目的でN900iLをテスト導入。フリーアドレス環境の効率性のさらなる向上を目指した(写真)。

 移転後の新オフィスのIP電話台数は,シスコシステムズ製IP電話機が350台,ソフトフォンをインストールしたノート・パソコンが110台,N900iLが50台。N900iL50台のうち,20台はFOMA契約をしていない内線専用の“白ロム”である。今後,N900iLだけではなく,他メーカー製なども視野に入れて無線IP電話機の台数を増やすことも検討中だ。

 また,移転を機に旧オフィスで一部使われていたデスクトップ・パソコンもノート・パソコンに変更。データ系,音声系の通信は同一のネットワーク・インフラで処理する。ただしデータ系の無線LAN規格は5GHz帯を使うIEEE 802.11aを採用。2.4GHz帯のIEEE 802.11bを使うN900iLとは周波数帯自体を別にした。無線LANのアクセス・ポイントは米アルバネットワークスの「ARUBA70」を48台,無線LANスイッチは同じくアルバの「ARUBA2400」を2台導入した。

 移転に伴ってセキュリティ関連のシステムや設備なども追加。サーバー・ルームの入室には静脈認証なども採用した。また,ノート・パソコンを社外に持ち出す機会が増えるため,社内ネットワークに接続するパソコンがウィルスに感染していないかなどをチェックするための検疫システムも導入した。これらを含めたシステム構築費用の総額は約6000万円。今後,TGアイネットは自社に導入したシステムを顧客などにも提案していく予定である。

(大谷 晃司=日経コミュニケーション

注:当初,「データ系,音声系の通信はすべて無線LAN経由とし」と記載していましたが,一部有線のところもあるため改めました(2006/1/13)