2005年1月から約1年をかけて,根気強く議論してきた高速電力線通信の研究会がついに幕を下ろした。

 総務省は12月22日,電力線通信の実用化の可否を問う「高速電力線搬送通信に関する研究会」の第12回会合を開催した。今回の会合では,前回議論したパブリック・コメントへの回答に対して,構成員から追加で寄せられた意見書について議論した。結果として,報告書の大きな変更には至らなかった。

 座長を務める東北大学電気通信研究所の杉浦行教授があいさつを始めたところ,日経ラジオ社が「電力線通信の実用化にはあくまで反対します」と改めて表明する場面もあったが,この意見は議事録に記すにとどまった。

 最後に杉浦教授が「電力線通信に関して影響を受ける懸念のある短波ラジオや電波天文などの関係者を交えて,ここまで議論した例は世界でも初めて。関係者の協力に感謝したい」と謝辞を述べ,研究会は閉幕した。

 研究会で取りまとめた報告書は,早ければ2006年1月の総務省情報通信審議会に提示する。情報通信審議会でスプリアス(不要輻射)などの技術基準を策定し,電波監理審議会などを経て来夏にも実用化が認められる見込みである。

(山根 小雪=日経コミュニケーション