写真●松田岩夫IT担当大臣(左)と張富士夫トヨタ自動車副会長(中)、安西祐一郎慶応義塾塾長(右)
写真●松田岩夫IT担当大臣(左)と張富士夫トヨタ自動車副会長(中)、安西祐一郎慶応義塾塾長(右)
[画像のクリックで拡大表示]

 日本経済団体連合会は12月20日、日本におけるIT人材の育成強化について議論する「高度情報通信人材の育成に関する産学官連携会議」を開催した。会議には、松田岩夫情報通信技術(IT)担当大臣や経団連副会長を務めるトヨタ自動車の張富士夫副会長、国内最大のIT専門学会である情報処理学会の安西祐一郎会長(慶応義塾塾長)など、産官学から主要メンバーが集結。IT人材育成に関する問題点や目指すべき方向性などについて議論を交わした。

 松田IT担当大臣は冒頭の挨拶で「日本の発展のためには、もっともっとICT(情報通信技術)を活用していかなければならない」と強調。トヨタ自動車の張副会長は「ITの活用を促進できるかどうかは、人材育成が大きなカギになる」と述べた。情報処理学会の安西会長は「情報技術の中核がわかるIT人材が、現在日本にはほとんどいない。まずは産官学がそうした現状を認識しなければならない」と危機感を示した。

 続いて壇上に上がった新日鉄ソリューションズの棚橋康郎会長は、「政府にはこれまで明確なITの国家戦略がなかった。大学も、実践教育は企業任せだった。もちろん企業にも責任がある」と、問題意識を投げかけた。「現状の大学における教育内容は教授の趣味の域を出ない。大学教授は反省が必要だ」(東海大学電子情報学部の大原茂之教授)など、教育関係者からも自らの問題点を指摘する声が挙がった。

 会議では、総務省や文部科学省、経済産業省の幹部も揃ってスピーチした。経済産業省商務省情報政策局の鍛冶克彦情報処理振興課長は「日ごろ、官は縦割りだとの批判を受けるが、IT人材育成の件では、関係省庁がしっかり連携していきたい」と話した。

 経団連は、IT即戦力人材を育成するIT専門職大学院を2007年4月にも設立したい考え。ソフトウエア工学(SE)や情報システムの構築・利用(IS)といった実践分野の教育に重点を置いた教育を目指し、産官学が連携しながら、カリキュラム作成や教員の提供を進めていく。