写真1:街灯に付けられた「情報プレート」(右)と「ユビキタス・コミュニケータ」(左)
写真1:街灯に付けられた「情報プレート」(右)と「ユビキタス・コミュニケータ」(左)
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写真2:東京大学の坂村健教授(右)と新宿区の中山弘子区長(左)
写真2:東京大学の坂村健教授(右)と新宿区の中山弘子区長(左)
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 東京・新宿区の「モア4番街」で12月19日、ユビキタス・コンピューティングの実証実験が始まった。街灯に、無線ICタグを付けた「情報プレート」を貼り、付近の店舗や公共施設の情報を市民に配信する。新宿区は2006年以降、情報プレートの設置場所を区内の全街灯1万本に広げ、区のインフラとして活用する意向だ。

 情報を引き出すのに使う機器は、無線ICタグの読み取り機能を備えた携帯情報端末「ユビキタス・コミュニケータ」。情報プレートに付いている無線ICタグをユビキタス・コミュニケータで読み込むと、画面の地図上に現在位置を示す(写真1)。

 画面上のボタンを選んでいくことで、その街灯の近くにある店舗、最寄りの駅入り口やトイレなど公共施設への道順、近辺のイベント情報など、その場所に応じた情報を閲覧できる。ユビキタス・コミュニケータは、モア4番街に設置した事務所で貸し出す。「新宿に不慣れな人でも、その場所に応じた情報を簡単に引き出すことができる」と実験に協力する坂村健 東京大学教授は説明する(写真2)。

 実験の基盤となる情報システムには、「ユビキタス場所情報システム」を使う。国土交通省が推進中の「自律移動支援プロジェクト」や、今秋に東京・上野公園一帯で実施された「東京ユビキタス計画・上野まちナビ実験」などで採用されたものだ。

 新宿の実験では新たに、個人が所有する携帯電話も情報閲覧に使用できるようにした。情報プレートには2次元バーコード「QRコード」が印刷されている。このQRコードを携帯電話のカメラ機能で読み込むと、携帯電話のインターネット・サービスを通じて、ユビキタス・コミュニケータに入っているコンテンツとほぼ同じ内容の情報を閲覧できる。専用端末のユビキタス・コミュニケータを使わずとも実験に参加できる仕組みを用意し、場所と情報を組み合わせたサービスの認知度を高めることを狙う。

 実験の主催者は、街灯など設備の提供で協力する新宿区と、坂村教授が率いるYRPユビキタス・ネットワーキング研究所、そしてシステムや設備の開発・設置を担当しているキュービット。中山弘子 新宿区長は、「だれでも簡単に街の情報にアクセスし、街を楽しめるようにするために、こうした技術は非常に有効。今回の実験を通して、情報プレートの活用の方向性を見出したい」と語る。

 新宿区は、情報プレートを情報配信のインフラとして本格利用することを検討中だ。通常は観光情報の配信手段として活用。災害発生時には状態を切り替え、災害の現況や避難場所への安全なルートの通知に使うイメージだ。

 今回の実験を機に、新宿区は情報プレートを張り付ける街灯を増やしていく。まず2006年3月には、新宿東口エリアの200本に広げる。順次西口にも設置エリアを拡張し、最終的には新宿区内の全街灯1万本に広げていく予定だ。坂村教授は「新宿区の取り組みは、場所と情報を結びつけた本格サービスの先駆けになるだろう」と先進性を強調した。今回の実験の一般参加は12月28日まで。

(参考:TRONSHOW2006特設ページ