米Advanced Digital Information 販売&マーケティング担当副社長のScott A.Roza氏
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Scalar i500
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 「増え続けるデータ量に合わせて,テープ装置もサーバー機のように拡張性を見据えたサイジング(容量設計)が必要になった」---米Advanced Digital Information(ADIC)販売&マーケティング担当副社長を務めるScott A.Roza氏は,テープ装置の世界にサイジングの波が起きていると語る。

 同社が東京エレクトロンを通じ発売した新製品「Scalar i500」は,あたかもサーバー機をスケール・アップするかのように1台のテープ・ライブラリの性能を拡張できるようにした製品である。コントローラ部のきょう体をベースに,拡張専用のきょう体を継ぎ足す。コントローラ部と拡張用のきょう体は,単一のロボット制御機構を共有する。つまり,バックアップ/アーカイブ・ソフトから見て単一のライブラリでありながら,ドライブや棚数を拡張できる。加えて,i500を含めた全機種が,単一のライブラリの内部をパーティショニング(分割)して複数台として扱う運用が可能だ。Roza氏にテープ装置の技術動向を聞いた。

---テープ装置は今後成長が見込めるのか。

 ストレージ市場は安定して伸びている。米IDCや米Gartnerといった市場調査会社の予測では,IT市場で年率5~7%程度の伸びを示す。ストレージ市場はIT市場の伸びの1.2倍から1.5倍程度の伸び率に達する。

 我々はテープを主力としており,バックアップとアーカイブの2分野にフォーカスしている。特にアーカイブの需要は大きい。企業が扱うデータの量は2年で2倍に増える。データが増えることでディスク容量が増えるが,ディスクと連動してテープ市場も拡大する。

---バックアップだけでなくアーカイブにもテープは使われるのか。

 アーカイブ用途であっても,数年に渡って長期間保存するデータはテープに保管する。ユーザーは,データの種類に応じてアーカイブする媒体を使い分ける。

 1年間など,短期間のアーカイブにはディスクが適している。必要な時にすぐに取り出す必要があるからだ。米EMCのメール・アーカイブ保存用ストレージ「Centera」が良い例だ。この一方で,10年など,長期間に渡って保管するデータはテープに格納する。例えば,政府が衛星から受信したデータをテープに格納し続けるといった用途だ。

---テープ装置は,増え続けるデータ量に合わせてリプレースする必要があるということか。

 我々は顧客に,テープ装置の課題について質問を投げた。その結果,顧客が抱えているデータ量の成長は激しく,データ量の増加に応じた拡張性をテープ・ライブラリに求めていることが改めて浮き彫りになった。こうして生まれたのが最新製品のScalar i500だ。我々はi500で,コストを抑えつつ拡張性を確保した。

---バックアップやアーカイブは分散処理だ。複数のテープ・ライブラリを独立したまま運用すればよいのではないか。

 Scalar i500では,独立したテープ・ライブラリのユニットをただ同じラックに搭載するのではなく,連結してつなぐことで単一のテープ・ライブラリとして扱えるようにした。連結後,すなわち拡張後のライブラリであっても,ロボット制御に使うコントローラ部は1つしかない。ロボット・アームが通るレールを1つにつなぎ,単一のロボット制御部を駆動する。

 ロボット制御部が1つに合体するメリットは,速度面や耐障害性の確保などの理由もあるが,一番大きな理由はコストが安いということだ。テープ・ライブラリのコストのうち,多くの部分を占めるロボット制御のコントローラ部を拡張モジュールから省略したということだ。

 性能面だけで言えば,独立した複数台のライブラリをシェアード・ナッシングで分散処理させた方がよいだろう。だが,コスト面を考慮に入れれば,ロボットが合体する形態の方が安価に済む。高価なロボット制御部のコントローラを分散して複数持つ必要がないからだ。

---拡張モジュールの増設はサーバー機のスケール・アップや負荷分散クラスタと同じ考え方だ。一方でSMP機のようにパーティショニングによるテープ装置の統合化も併用できるようにしているが,この2者を組み合わせて使うことがあるのか。

 パーティショニングは,ロー・エンドからハイ・エンドまでADICの全機種が持っている機能だ。大きなライブラリだけがパーティション機能を持っているわけではない。あらかじめ成長を見込んだハードウエアを納入しておき,後からライセンスの追加で容量を拡張する販売形態であるCoD(キャパシティ・オン・デマンド)も全機種に共通だ。

 一般論として,いくつか言えることがある。まず,容量の小さな機種を寄せ集めるよりも,最初から大きな機種を購入した方が安価になる。また,小さな機種を2台用意するよりも,2倍の容量を持つ機種を2台にパーティション分割した方が安価になる。この一方で,小さな機種は,最初に小さく少ないコストで導入できるというメリットがある。サイジング(容量設計)に際して,多様性を確保することは有益だ。