上野や浅草、神戸など、昨年から今年にかけて日本各地で実施されたユビキタス・コンピューティングの実証実験。来年2006年は、この動きが加速する。

 その第一弾は、東京・新宿区で12月19日から始まる実証実験だ。街灯200本以上に無線ICタグを埋め込み、ユビキタス・コミュニケータを使って市民に店舗情報などを提供する。今年実施済みの「上野まちナビ実験」や「浅草ユビキタス観光ガイド実証実験」の流れを汲むものである。

 新宿の実験では新たな試みとして2次元バーコード「QRコード」も付与する。カメラ付き携帯電話でも実証実験のコンテンツを閲覧できるようにし、実験の認知度向上や浸透を狙う。

 2006年2月に開港する神戸空港は、空港利用者に向けた情報提供サービスの実証実験を始める。坂村健 東京大学教授が率いるYRPユビキタスネットワーキング研究所が協力する。

 この実験では、空港ターミナル内に100個以上の「無線マーカー」を設置する。その場所の情報などを記録し発信する無線マーカーと、携帯情報端末「ユビキタス・コミュニケータ」を組み合わせることで、利用者の状況を考慮したサービスを提供する。例えば、搭乗時間が迫った利用者に対して搭乗口までのルートを示す、といったものを検討している。これまでの実証実験では、無線マーカーの通信技術に赤外線や無線LAN、Bluetoothなどを使ってきたが、神戸空港の実験では「Zigbee」も使用する予定。

 「ユビキタスあおもり」プロジェクトを推進している青森は、2006年1月から2月にかけて実証実験に取り組む。雪が降る寒冷地域で無線ICタグなどの機器がきちんと機能するかなど、積雪寒冷地帯に特有の課題を検証する。

 これらの実証実験は、国土交通省などが実施している「自律移動支援プロジェクト」の一環。「2006年はさまざまな組織の協力を得つつ、20カ所以上で実験する」(YRPユビキタスネットワーキング研究所の山田浩之ユビキタス応用推進2部部長)という。

食品トレーサビリティ実験の“発展型”も実施

 モノの生産や物流の分野についても、青山商事の実証実験(参考記事)をはじめ、いくつかのプロジェクトが始動している。2006年1月から2月にかけて、生活協同組合コープさっぽろ、三越、サミットなどが共同で、食品トレーサビリティ・システムの実験をスタートさせる。

 この実験では食品の生産、加工、流通、販売に至る全プロセスにモノや場所を識別する仕組み「uID(ユビキタスID)」を適用する(参考記事)。店頭に並んでいる商品のバーコードや無線ICタグを読み取ると、食品の生産地や流通経路、保存状況の履歴など、一連の情報を確認できるようにする。対象とする商品は農産物や畜産物、水産物、加工食品など。また個人の購買履歴をICカードに蓄積し、商品の販促や健康情報の提供にも活用する予定。

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