写真1:薬の服用歴などを記録した「電子お薬手帳」
写真1:薬の服用歴などを記録した「電子お薬手帳」
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写真2:薬局では患者に処方する薬の種類をチェック
写真2:薬局では患者に処方する薬の種類をチェック
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写真3:自宅でも薬や食品の組み合わせを確認
写真3:自宅でも薬や食品の組み合わせを確認
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 YRPユビキタスネットワーキング研究所と東京大学は共同で、医薬品や食物にまつわる事故を未然に防ぐためのシステムを開発した。12月14日から開催している「TRONSHOW2006」で公開中だ。

 このシステムのポイントは、非接触型ICカードの「電子お薬手帳」(写真1)と、飲み薬のパッケージに付けた無線ICタグ、そして医薬品のデータベースにある。

 電子お薬手帳には、本人が過去に服用してきた薬の履歴や、発症したアレルギーの履歴を保存する。電子お薬手帳と無線ICタグ・リーダーで読み取った薬の情報、データベースを突き合わせることで、アレルギーなど良くない症状を引き起こす薬の組み合わせを警告する。

 データベースには薬だけでなく、例えばそばなどアレルギーの原因となりうる食品や加工食品、健康食品などのデータも蓄積する。薬と加工食品/健康食品の組み合わせによる事故が問題になりつつあるからだ。データベースの構築には、東京大学大学院 薬学研究科の澤田研究室が協力している。

 システムの利用場所は、薬局や自宅を想定している。薬局では薬を患者に処方する際に、薬剤師が無線ICタグ・リーダーで、電子お薬手帳と薬のデータを照合。間違った薬を処方していないか、あるいは患者にとって危険な薬を処方していないかをチェックする(写真2)。「二つの薬の名称はよく似ているが、それぞれの効果はまるっきり逆、というケースがある。“逆の薬”を患者に出してしまうミスも、このシステムでなくせる」(坂村健 東京大学教授)。

 一方自宅では無線ICタグ・リーダーを使って、これから食べようとしている食品と、本人が服用している薬の組み合わせを確認できる(写真3)。薬と食品の危険な組み合わせパターンはかなり明らかになっているという。だが、その組み合わせのパターン数は多く、しかも組み合わせの情報が広まっていない。「システムでこの組み合わせを漏らさず確かめる」(坂村教授)ことを狙う。

 無線ICタグ・リーダーには、YRPユビキタスネットワーキング研究所が開発した製品を使用。複数の無線ICタグを同時に認識できるという。電子お薬手帳として使うICカードには、セキュリティ対策を施した「eTRON」規格を採用した。

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