写真1:6省の取り組み
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写真2:総務省によるユビキタス分野の研究開発戦略
写真2:総務省によるユビキタス分野の研究開発戦略
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写真3:食品関係の事件の例
写真3:食品関係の事件の例
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写真4:欧州のトレーサビリティの現状
写真4:欧州のトレーサビリティの現状
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 坂村健教授が提唱する「uID(ユビキタスID)」には、政府関係者も熱い期待を寄せる。「TRONSHOW2006」1日目の2005年12月14日午後に行われた講演では、uIDを使った実証実験に関わっている6省のうち、総務省、農林水産省、国土交通省がそれぞれの実験計画と狙いを語った。

 最初に登壇した総務省の松本正夫 大臣官房技術総括審議官は、まず6省の取り組みを解説(写真1)。続いて、総務省が2006~2010年にかけて実施する「u-Japan」計画を説明した。u-Japanは、ユビキタス社会の実現を目的としたものである。

 さらに実証実験を通じて、坂村教授が提唱するuIDの普及を支援していく姿勢を見せた。同省は2006年度の概算要求で、ICタグの情報をやりとりするネットワーク技術の整備に24億円を計上している。そのほか、アジア諸国との連携や、センサー・ネットワークの実験を実施する計画などを説明した(写真2)。

 農林水産省の湯地和夫 消費安全局消費安全課企画官は、牛海綿状脳症(BSE)の発生を機に、2003年に食品安全基本法や牛肉トレーサビリティ法が整備された経緯を紹介。その後も農産物の産地偽装などの不祥事が相次ぎ発覚し、食品への信頼が揺らいでいることから「牛肉以外の分野でもトレーサビリティの整備が急務となっている」と話した(写真3)。同省は「電子タグ高度利活用技術に関する研究開発事業」として、NECや牛肉、鮮魚などそれぞれの分野ごとに、流通慣行に適合したトレーサビリティ・システムの開発に取り組んでいる。

 続いて登壇した京都大学の新山陽子 大学院農学研究科教授はこれを補足して、卵などの農産物にも応用が拡大している欧州のトレーサビリティの現状を紹介した(写真4)。

 国土交通省の内村広志 政策総括官は、同省が坂村教授らとともに進める「自律行動支援プロジェクト」を紹介した。同プロジェクトは、無数のICタグを街中に配置し、音声などでその位置を知らせる歩行者向けナビゲーション・システムを構築するもの(参考記事)。2006年3月に技術仕様を公開する予定である。ユビキタス技術で、65~69歳の“若年高齢者”や、障害者の社会参加を促す。

 主催者側の立場から参加した東京大学助教授の越塚登氏は、政府の関与なしにICタグの普及が進むと、互換性のない規格が乱立する危険を指摘した。「『技術を取捨選択するのはマーケット』という考えは、半分正しくて、半分間違い」(越塚氏)。モノや場所を一意のコード(ucode)で識別するuIDのインフラについて、政府主導で整備する必要性を強調した。

 東京大学大学院の大石久和 情報学環特任教授も「これからは社会インフラとしてユビキタス技術が不可欠になる時代。この面で世界を先導する日本の役割は重要」と締めくくった。

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