国際競争力を強化し、自動車に続く“外貨を稼げる”IT産業に育成する。そのため国は「イノベーションが継続的に行えるITプラットフォーム基盤の研究開発に、今後5年間で1兆円投資すべき」とした最終報告を、164人の国会議員で構成する「情報産業振興議員連盟(額賀福志郎会長)」が12月13日に開いた情議連総会で採択、政府に提言することになった。

 情議連は今後、この最終報告に基づき総務省/経済産業省やトヨタ、キヤノンなどのユーザーを加えた専門チームを結成。2006年度を準備期間にあて、手がける戦略分野や基幹技術の見極め、新世代の戦略モデルを設定。同モデルを実現するためのナショナルプロジェクトの推進体制を設計し、2007年度から企業・政府・大学連携の基で具体的な研究開発に着手する。

 最終報告「ユビキタス・オペレーティング・プラットフォーム(UOP)戦略の提案」は、情議連の中に設けた情報産業国際競争力強化小委員会とタスクフォースメンバーが半年かけてまとめたもの。タスクフォースにはNTTや富士通、日立製作所、NEC、沖電気工業などIT企業や、経産省、総務省、内閣府などが参加。6月末から精力的な関係方面へのヒアリングなど積極的な調査・分析活動を続けてきた。

 情報産業国際競争力強化小委員会の茂木敏充委員長は、(1)IT産業を自動車に次ぐ世界レベルで持続的な競争力のある産業に育成する、(2)米国モデルを超える日本発の「新IT産業モデル」を創造する、(3)生活、ビジネス、行政、社会的課題など各分野のソリューション基盤となる「世界最強のインフラプラットフォーム」を実現する、など3つのゴールを提起した。

 それらの目標を実現するため、IT企業の「選択と集中」の追求、産業構造の転換、企業・政府・大学連携の最適化、アジアとの連携、日本・アジア発の国際標準作り、本格的なナショナルプロジェクト推進体制、過去の経験から学習し、今回のプロジェクト遂行の手法を「国家的なBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)のひな型にする」ことなどの検討が要求された。

 これに受けて、タスクフォースリーダーである伊東千秋富士通専務は、(1)日本が世界の最先端のITマーケットになること、(2)日本のIT産業企業が「世界のトップグループ」に成長しないと生き残れないこと、(3)「もの作り」が日本の生命であり、そのためのインフラ構築が必要であることなど3つの基本戦略で検討を進めてきたと話す。

 我が国では情報家電分野の強化施策が展開されており、産業として世界的な強みとなっている。同分野はITとの融合でますます付加価値が充実するものと期待されるものの、情報家電やITSに代表される「あらゆる人とモノが結びつく」という意味のユビキタス市場が増大すると、そのバックヤードを支える社会インフラ基盤としてのITインフラの「安心・安全・快適さ」に対する技術の追求は、今の2~3桁増という飛躍的な完成度や処理性能が要求される。これはフロント系やネットワーク系、サーバー系など現在のIT産業には格好の技術的な挑戦だ。

 インターネット登場を第1次のIT革命とすると、ユビキタス時代はさしずめ第2次IT革命と位置づけられる。すべてのデファクトや知的財産を米国に握られ、1次革命で「負け組」となった我が国IT産業は、第2次IT革命では勝利者とならねばならない。

 幸い、第2次は情報家電や自動車、精密機器など世界をリードする我が国の産業がユビキタスアプリケーションの開発でリードする確率は高く、IT産業はそのプラットフォーム開発で潜在能力を結集すればかなりの地位を占めることが可能だ。ユビキタスアプリケーションを支えるプラットフォーム市場は、米IDCによると2010年には今の1.4倍の82兆円が世界で見込まれる。最終報告では我が国IT産業のターゲットとして、2010年に海外販売比率25%、2015年に自動車産業並みの50%を目指す。

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