「必要な作業をもれなく洗い出し、課題やリスクを関係者で共有し、基本動作をしつこく繰り返す」。トヨタ自動車のIT部門(コーポレートIT部)で開発支援業務を手がける加納栄寿氏は、失敗プロジェクトの回避に向けた基本をこう語った。プロジェクトマネジメントのコンサルティングを手がけるアイ・ティ・イノベーションが12月6日に開催したイベントでの発言である。

 トヨタ自動車では小規模のものも合わせると、年間約100のシステム構築プロジェクトが同時並行で進行しているという。「どの会社でも事情は同じかと思うが、すべてのプロジェクトが計画通りに進んでいるかというと、そうではない」(加納氏)。

 そこでトヨタ自動車ではプロジェクトの品質を高めるべく、いくつかの施策を打っている。近年トヨタ自動車が実施した主な施策は、次の三つ。
(1)「構想検討ガイド」の作成(2005年5月に展開を開始)
(2)「共通フレームワーク・業務フレームワーク」の構築(2004年4月からプロジェクトに本格適用)
(3)「トヨタシステム開発マネジメント標準」の作成(2004年5月に展開を開始)

 構想検討ガイドは、システムの企画段階の手法やプロセスを定義し記述したドキュメントである。業務改革の進め方やプロジェクトのスコープの設定方法、システム化による効果実現の道筋の付け方など、企画に参画する関係者が押さえるべきポイントを記述したものである。例えばガイドでは、構想段階の最後で「プロジェクト企画書」の作成を必須としている。

 共通フレームワーク・業務フレームワークは、使用するハードやOS、ミドルウエアなどの基盤技術について、選定や利用のルールを定めたもの。

 トヨタシステム開発マネジメント標準は、システム構築プロジェクトの最初から終了にわたって、必須の作業内容や成果物の形式、リスク管理表など、必要な“ツール”を定義したもの。

 「必要な作業をもれなく洗い出し、課題・リスクを関係者と共有し、基本動作をしつこく繰り返す。(トヨタのモノづくりと同じことを)システム構築でも推進中だ」(加納氏)。

【IT Pro編集から】初出時,本文中に示した主な3つの施策それぞれについて具体例を挙げて説明していましたが,流動性が含まれる部分がありましたので割愛しました(2005年12月8日)。