日本テレコムは12月2日、次世代のプラットフォーム・サービス構想「IRIS」を発表した。通信インフラだけではなく、ネットワーク・インフラの一部としてコンピュータ・リソースまで提供する。来年1月にはサービス第1弾として、「ULTINA On Demand Platform KeyPlat」(ULTINAは新ブランド)というユーティリティ・コンピューティング・サービスを開始する。弓削哲也専務執行役CTO(最高技術責任者)は、「今後当社は、通信事業者からICT(情報コミュニケーション技術)事業者に進化する」と語る。

 弓削CTOはIRISの特徴を三つ挙げる。(1)ITシステムのネットワーク機能化、(2)ネットワーク制御の自動化、(3)シームレスなユビキタス環境である。ITシステムのネットワーク機能化は、ファイアウォールやVPN、サーバー負荷分散といったネットワーク関連の仕組みを、日本テレコムがサービスとして提供するもの。(2)のネットワーク制御の自動化は、トラフィック量やユーザーが利用する端末、アプリケーションなどの条件に合わせて、利用するネットワークの種類や帯域幅をネットワーク側で自動的に選ぶ仕組みである。(3)は、いわゆるFMC(固定電話と携帯電話の融合)を実現できる次世代ネットワーク。固定電話、ブロードバンド、無線LAN、携帯電話といったネットワークを束ねるバックボーンを構築する。

 次世代ネットワークについては、NTT、KDDIも構築計画を明らかにしている。固定電話や携帯電話、データ通信のインフラを、一つのIPネットワークにしようというものだ。日本テレコムはIRISで両社を追う形だが、弓削CTOは「インフラをIP化し、シームレスに接続することは次世代ネットワーク構想としては当たり前。そのインフラをいかに使ってもらえるようにするかを重視した」と説明する。

 そこで考えたのがグリッド技術を使ったユーティリティ・コンピューティング・サービスのKeyPlat。米オラクルのOracle 10g Release2を利用して同社のデータセンターにグリッド・コンピューティング環境を実現した。オンデマンド型のサービスは、NTTコミュニケーションズ、CSK、新日鉄ソリューションズなども提供中だが、「KeyPlatはサーバー・リソースだけでなくネットワークの帯域まで連動してオンデマンドで増減できる点が特徴だ」(安川 新一郎インターネット事業部長)。

 例えばEC(電子商取引)サイトなどでアクセス数が急増した場合、サーバーだけでなく、サーバー負荷分散装置やファイアウォール、ネットワークの性能強化が重要になる。KeyPlatでは、サーバー・リソースを増やすと、これと連動してネットワーク関連のリソースを増やす。ユーザー企業は、サーバーの負荷やアクセス数が増えてきたときに、専用のWebページから必要なサーバー・リソースを指定するだけ。あとはネットワーク側で自動調整し、必要なリソースを割り当てる。料金体系は定額制と、分単位でのCPU利用量を基にした従量制。ユーザーはどちらかを選択できる。

 日本テレコムはKeyPlatを、ASP型サービスを提供する事業者や、新しいビジネスを立ち上げる企業を中心に売り込む。「サービス開始に先立ってプレマーケティングを実施した感触では、顧客からの反応は上々」(安川事業部長)。すでに、3~4社がほぼ採用を決めているという。