日本企業にとって今後有望なオフショア・パートナーは、オーストラリアとブラジル、次にタイとベトナム---。調査会社のガートナー ジャパンがこんな見解を提示した。

 ソフト開発だけでなく、情報処理、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、ヘルプデスク、システム運用などさまざまな領域で、ユーザー企業やITベンダーによるオフショアの利用は広がっている。ガートナー ジャパンの足立裕子ITマネジメントグループ主席アナリストによると、世界市場におけるITのオフショア・サービス提供国は、「リーダーおよび準リーダー」、「新興国」、「新規参入国」の3グループに分けられる。リーダーとしては日本にもなじみの深いインドや中国だけでなく、ロシアやカナダ、アイルランド、イスラエルなどがある。

 最近日本では、そうしたリーダー格の国の一部がオフショアの候補として名前が挙がることがある。しかし足立氏は「そのトレンドに安易に乗ることは危険だ」と警告する。「日本企業との取引が少なく、日本企業のビジネスプロセスの理解度が不透明な国は、オフショアのメリットが十分に出せないおそれがある」(足立氏)。

 足立氏は新興国のオーストラリアやブラジル、そして新規参入国のタイやベトナムが次なるオフショア拠点として有望だとしている。「オフショアを成功させる上では開発能力はもちろん、日本の経済、文化、ビジネスプロセスへの理解度合いが重要なポイント」(足立氏)だからだ。

 オーストラリアは日本からの移住者や学生など、日本語を扱える人材が多い。ブラジルは日系人が多数いることや、欧米系企業がオフショアに出しており経験が増えつつあること、日本の裏側に位置するので時間を有効に活用できることなどがメリットという。

 タイとベトナムについては日本との文化的な親和性が高いことや、製造系の日本企業が拠点を多数持っており、日本企業のビジネスプロセスへの理解があることを挙げる。

 ただし各国とも特性があるので、任せる領域を十分に見極めることが肝要。例えばオフショア新興国については、ネットワークなどのインフラが未整備なこと、スキルが高いエンジニアが限られていることといった課題がある。ユーザー企業は安直に手を出すべきではないし、ITベンダーもトレーニングなどの初期コストの存在を認識しておく必要があるという。