日経BPガバメントテクノロジーと日経パソコンが2005年11月18日に開催した「第7回 全国電子自治体会議」の主催者講演で、日経パソコンの中野淳副編集長が、行政情報化の進展度調査「e都市ランキング 2005」と自治体サイトにおけるWebガバナンスについて解説した。講演の要旨は、以下の通り。

 日経パソコンは毎年、アンケートを基に市区町村の行政情報化の進展度を比較する「e都市ランキング」を実施している。2005年に実施した「e都市ランキング 2005」(http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NGT/govtech/20050711/164369/)では、2091の市区町村の協力を得た。アンケートの回収率は87.2%、人口カバー率は93.1%に達している。1位は、幅広い分野で情報化に取り組んでいる兵庫県西宮市。この1年間で、Webサイトのアクセシビリティ対策を進めたことで、前年の51位から一気にトップになった。2位は岩手県水沢市、3位は長野県茅野市だった。

 自治体サイトでの情報やサービスの提供は、以前と比べて、かなり進んでいる。市区町村の概要は96.5%の自治体が掲載。申請書類のダウンロードサービスも、63.5%の自治体が実施している。また、34.7%の自治体が、携帯電話向けのWebサイトを開設。1.6%の自治体が、RSS形式でも情報を提供している。電子申請サービスは、今年度末までに、34.5%の自治体が対応する予定だ。

 一報で、アクセシビリティ対策は進んでいない。2004年6月に、アクセシビリティ対策の基準がJIS(日本工業規格)に加わった。自治体には、これを尊重する法律上の義務がある。だが、アクセシビリティ対策のガイドラインを作っている自治体は13.2%しかない。対策を進めるには、庁内全体で組織的に対応することが必要だ。

 基本的なセキュリティ対策では、個人パソコンの持ち込みを禁止している自治体は50.2%、パソコンを捨てる時にきちんとデータ消去をしている自治体は64.4%だ。昨年より対策は進んでいるがまだまだ不十分。セキュリティ監査も進んでいない。

 住民が安心して便利に使えるWebサイトを構築するには、単に情報やサービスを提供しているだけではだめだ。アクセシビリティやユーザビリティに配慮しつつ、Webサイト全体のデザインを統一して、誰もが利用しやすいWebサイトにしなければならない。各部署がバラバラに行動しているため、関連する情報が複数のページに分散している自治体も多い。Webサイトで提供する情報やサービスにも、統一的な管理が必要だ。

 そこで提案したいのが、自治体のサイトを統一的に管理するWebガバナンスという考え方だ。首長以下、共通の認識を持った横断的な組織を作り、Webガバナンスを進めることで、住民に役立つWebサイトを構築できる。

 情報化を進めるために、ほかの自治体の取り組みについて知りたいという要望をいただくことが多い。そこで今年、e都市ランキングの調査結果をまとめた「e都市ランキング 2005 報告書」(http://npc.nikkeibp.co.jp/npc/ranking/)を発行した。日経パソコンは、これからも行政の情報化に役立つさまざまな情報を提供していきたい。