左からACCESSの荒川亨社長,インデックスの落合正美会長,KDDIの伊藤泰彦代表取締役執行役員副社長,スカイパーフェクト・コミュニケーションズの重村一社長
左からACCESSの荒川亨社長,インデックスの落合正美会長,KDDIの伊藤泰彦代表取締役執行役員副社長,スカイパーフェクト・コミュニケーションズの重村一社長
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 ACCESSが11月22日に開催したプライベート・セミナー「ACCESS DAY 2005」の中で,「通信と放送の融合」をテーマに各界の論客が勢ぞろいした。

 通信業界を代表してKDDIの伊藤泰彦代表取締役執行役員副社長,放送業界を代表してスカイパーフェクト・コミュニケーションズの重村一社長,通信と放送を取り持つコンテンツ・プロバイダを代表してインデックスの落合正美会長,そして今回のセミナーの主催者であるACCESSの荒川亨社長がパネリストに参加。それぞれの立場から見た「融合」の現状と課題をぶつけ合った。各界を代表する論客が集まることから注目度も高く,会場には多くの来場者がつめかけた。ただ,多岐に渡り課題が山積するテーマだけに,それぞれの立場の主張に止まった感のあるセッションだった。

 インデックスの落合会長は,「これまでの『通信と放送の融合』の議論は,ほとんどが通信側からの主張であり放送側のメリットが少なかった」と指摘。放送側にもメリットがある枠組みを作ることが重要とし,放送業界も「通信と放送の融合」を逆にチャンスとして捉えるべきではないかと主張した。

 これに対してKDDIの伊藤副社長は,通信事業者から見た「融合」を解説。「インターネットがすべてを飲み込むことで『融合』は既に起こっている。その上に乗るサービスが『融合』するのも当然」との考え方を示した。その中で,USENの「GyaO」などの無料ネット・サービスに対して懸念を示した。通信事業者はインフラに多大な投資をしているのに,「その上にタダ乗りするようなビジネスモデルには問題があるのでは」と指摘。一方で「コンテンツを無料で出すようなやり方には,通常の方法では対抗できない。こちらも同じような手法を取らざるを得ない」と対抗する構えも見せた。

 テレビ局出身のスカパー重村社長は,「『通信と放送の融合』時代も,そこを流れるコンテンツが一番大事であることに変わりない」との持論を展開。1939年に封切られた映画「風と共に去りぬ」が未だに収益を上げている例を示し,「このようないいコンテンツがあってこそ技術が生きてくる」と語った。一方で,なかなか進まないテレビ局のコンテンツのネット配信については,権利の問題が大きいと指摘。「現在の放送法は番組をビデオに録ることも考えていなかった時代にできた法律。それに基づく著作権法上の解釈も時代に合わなくなっている。デジタル時代に合うように放送法を抜本的に変えていく必要がある」と語った。

 非常に最後にACCESSの荒川社長が上記の議論をまとめ,「『通信と放送の融合』のパラダイム・シフトは止められない。有力なコンテンツを持つ放送業界はすごい潜在能力を持っている。一方で通信事業者は,課金プラットフォームなどに強みを持っている。両者それぞれの強みを生かせるのではないか」とし,双方にとってメリットのある「融合」のビジネスモデルこそ重要である考えを示した。