名古屋証券取引所(名証)は11月18日、相場報道システムの障害により今月4日午前の取引が完全停止した件について、金融庁に障害報告書を提出した。同取引所は同日午後5時からの会見で、システム障害が起きたのは、システム運用担当者(オペレータ)が起こした操作ミスが原因だったと説明した。

 操作ミスを起こしたのは、富士通の子会社である富士通中部システムズが運用操作を外注した協力会社の社員。操作ミスにはすぐに気付いたものの、回避策の不手際と、その後の報告漏れが重なり障害発生を防げなかった。名証は、システムの開発・保守・サポートを富士通に、運用は富士通中部システムズに委託する契約を結んでいる。

 名証でのシステム障害の直前(11月1日)には、東京証券取引所(東証)でもシステム障害が発生。この原因も、富士通が出した操作手順書の記載漏れだった。図らずも富士通は、わずか4日間に、人的ミスにより東証と名証の両取引所のシステムを停止させたことになる。

 操作ミスから障害発生までの経緯は次の通り。障害発生直前の営業日(11月2日)の午後6時ごろ、取り引き終了に伴い、オペレータは相場報道システムのデータベース(Oracle)のデータをバックアップするために、相場報道テーブルをエクスポートした。その後、本来ならバックアップ媒体に保存するコマンドを実行するところを、オペレータはエクスポート処理を再度実行した。操作ミスに気付いたオペレータは、エクスポート処理を2.8秒後にキャンセルし、保存コマンドを実行した。

 エクスポート処理は、「制御テーブル」と呼ぶファイルをリネームした後、データを退避、再び制御テーブル名を元に戻すという手順で進む。今回、エクスポート処理を慌ててキャンセルしたことで、制御テーブル名が書き換わったままになった。オペレータは、やり直した操作で問題がなかったかどうかの確認をしていない。そのため、翌営業日の4日にシステムを起動する際にテーブルが読み込めず、相場報道システムを起動できなかった。

 さらに、オペレータはバックアップ処理の操作ミスを、名証の担当者や、同システムを実際に担当しているSEに報告しなかった。2日の午後9時ごろになってようやく担当SEに電話連絡した。だが、連絡を受けた担当SEも報告内容を勘違いし、「特に問題はない」とオペレータに回答。名証の担当者や担当SEの統括責任者には報告しなかった。

 交代制を採るオペレータは、前営業日に起こった事項を連絡ノートに記載し次の担当者に申し送りすることになっている。だが、「問題なし」と判断された操作ミスは連絡ノートに記載されず、翌営業日のオペレータには情報が伝わらなかった。このため、4日の障害発生時には、障害場所の特定に時間がかかった。

 名証は18日、再発防止策も発表した。対策は大きく二つある。一つは、操作ミスを防止するための施策で、運用手順の遵守の徹底を改めて教育するほか、運用作業終了後にミーティングを実施し、情報の確認体制を整備する。ミスを減らすために、コマンドの見直しや自動化にも取り組む予定だ。

 もう一つは、該当テーブルに対する管理、保守についての施策。すでに、テーブルの存在を毎日確認する運用に暫定的に切り替えている。今後はコマンド・ミスによってテーブルが消えないようなバックアップ方法を検討する。

 名証は「システム運用にかかわる管理が不十分だった。2時間にもわたって市場機能を停止する事態を招いたことは重大な責任がある」として、役員処分も実施する。具体的な内容は、11月30日の取締役会で決定する予定だ。