原作のストーリでは,ドラえもんの誕生は100年以上も先のことである。秘密の道具を無尽蔵に取り出せる4次元ポケットなど,ドラえもんと全く同じ能力を持ったロボットの実現は,残念ながら現時点では不可能であるが,「いつもそばにいて,一緒に成長するロボット」ならできるはず---。

 現在開催中の組み込み技術の専門イベント「ET(Embedded Technology)2005」の基調講演で,バンダイ 技術開発室 マネージャの芳賀 義典氏は「自分が子供だったら,楽しいことや悲しいことを共有し,別れるときには『キミと一緒にいられてよかった,ありがとう』と言える存在」のロボットを目指して,開発作業を進めていると述べた。同氏は,ドラえもんをモチーフにした友だちロボットを2010年に作ろうというバンダイのプロジェクト「リアル ドリーム ドラえもん プロジェクト(RDDP)」の責任者を務めている( Tech-On!の関連記事1 Tech-On!の関連記事2 Tech-On!の関連記事3)。

 バンダイは,2005年11月30日に始まる「2005国際ロボット展」での公開に向けて「BN-17」と呼ぶロボットの開発を進めている。同社が2002年に開発したロボット「BN-7」の後継機種に当たる。BN-7は処理内容に応じて,画像・音声処理を実行するパソコン部と,外部からの刺激に対する応答速度をできるだけ短くした反射行動エンジン部で構成していた。

 現在開発中のBN-17では,このうちパソコン部を分離して,ユーザーが持っているパソコンが肩代わりする構成にした。パソコンと反射行動エンジン部は無線LANでつなぐ構成とする。反射行動エンジン部は,ARM系プロセサとLinux,カメラ,センサー,アクチュエータなどから成り,販売価格は5万円~10万円を目指す。

将来はネット経由で遠隔のコンピュータを利用

 無線LAN経由でコンピュータと接続するようにしたのは,ユーザーが新たに購入する本体価格を安くするのが主目的だが,将来はインターネット経由で遠隔のコンピュータと接続する構成を考えているからだという。こうした構成にすることにより,膨大なコンピューティング資源を利用できるだけでなく,芳賀氏が思い描く「子供と共に成長するロボット」を実現できるようになるからだ。ロボットには,購入時に組み込まれたアプリケーション・ソフトウエアに加え,必要なものを順次追加していけばいい。

 芳賀氏は,ユーザーをひきつけるのが「未完成でも,学習機能があって『けなげ』な存在」だとし,新しいエンターテインメントの分野が期待できると語って講演を締めくくった。

菊池 隆裕=日経エレクトロニクス