写真1 「Outlook 2003」の迷惑メール・フォルダ
写真1 「Outlook 2003」の迷惑メール・フォルダ
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写真2 「Thunderbird」の迷惑メール・フォルダ
写真2 「Thunderbird」の迷惑メール・フォルダ
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写真3 「POPFile」で迷惑メールを学習させているところ
写真3 「POPFile」で迷惑メールを学習させているところ
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 これまで4日間にわたって,企業のシステム部門における迷惑メール対策や,インターネット接続事業者(プロバイダ)による対策を見てきた。しかし企業のサーバーで迷惑メール対策を施している場合でも,サーバー側では誤検知を防ぐために迷惑メールの判別精度を緩くする場合が多い。すべての迷惑メールを取り除くことは不可能だ。またプロバイダの対策も,まだまだ効果を発揮しているとは言い難い。

 最後の“とりで”は,やはり個人が使うクライアント・パソコンでの対策である。しかもこのクライアントでの対策。決して侮ることはできない。メール・クライアントの機能やツールを使いこなすだけでも,十分な迷惑メール対策を実現できるのだ。

OutlookやThunderbirdに迷惑メール対策機能が内蔵

 最も手軽に個人で実施できる迷惑メール対策は,まずはメール・クライアントの機能を使う方法だ。現在,代表的なメール・クライアントである「Outlook 2003」(写真1)や「Thunderbird」(写真2)は,迷惑メールを自動判別し,専用の「迷惑メール」フォルダに格納する機能を備えている。こうした特別なフォルダに自動で振り分けるだけでも,不快な迷惑メールを目にすることを防げるし,重要なメールが迷惑メールに紛れることを防げる。

 メール振り分けソフトを使う方法も有効だ。例えば「POPFile」というメール振り分けソフトは,迷惑メール対策に有効なツールとして普及している。POPFileはパソコンに常駐して,メール・サーバーとメール・クライアント間の通信に介在。送られてきたメールが迷惑メールかどうかを判別し,迷惑メールだと判断した場合にメールの件名に「spam」などの文字列を追加できる。この「spam」という文字列をキーワードにしてメール・クライアントで自動振り分けを行えば,迷惑メールを直接「ごみ箱」や任意のフォルダに格納することが可能だ。

 POPFileは,インストールが若干難しいかもしれないが,性能は高いので是非活用したい。POPFileは「KAKASI」という日本語の形態素解析ソフトを内部で使っており,日本語の迷惑メール判定が得意である。

利用開始時に学習作業が必要

 ただしThunderbirdとPOPFileは,使い始めのときに迷惑メールを「学習」させる必要がある。ThunderbirdとPOPFileは「ベイズ推定」という確率論に基づくアルゴリズムを用い,迷惑メールを判別している。このため,一定数の迷惑メールを手動で指定し,判別する材料を与えなければならない。

 といってもこれは難しくない。Thunderbirdの場合は迷惑メールを指定して「迷惑メール」ボタンを押すだけ。この作業を数十通程度行えば,ある程度実用に耐えうるレベルの判定精度になってくる。POPFileも場合も,Webベースのユーザー・インタフェースを使って迷惑メールを指定すればよい(写真3)。定期的にこの学習作業を行えば,90数%の精度で迷惑メールの判定が可能になる。

 一方,Outlook 2003は,「サポート・ベクター・マシン」というパターン認識の技術を用いて迷惑メールを判別。初めから,迷惑メールのパターンを学習しているため,初期状態でもある程度の迷惑メールの判別が可能だ。

 もちろん,メール・クライアントでの迷惑メール対策機能と,メール振り分けソフトは併用することも可能だ。POPFileを,Outlook 2003やThunderbirdと同時に使えば,さらに精度の高い迷惑メール対策を実現できるだろう。

(武部 健一=日経コミュニケーション

【集中連載 企業を守る 最強の迷惑メール対策】の特集ページはこちらをご覧下さい。

【集中連載 企業を守る 最強の迷惑メール対策】記事一覧
●(1) 企業での対策1−−部分被害は既存システムで対処せよ(11月14日)
●(2) 企業での対策2−−全社的被害はアプライアンスの導入で対抗(11月15日)
●(3) 企業事例−−8万通/日の迷惑メールを撲滅したJALグループ(11月16日)
●(4) プロバイダの取り組み−−「迷惑メール送信行為の阻止」で苦悩(11月17日)
●(5) 個人の対策−−定番メール・ソフトでここまでできる(11月18日)