NTTグループが、法人向けのネットワークサービスや関連のソリューション事業を、NTTコミュニケーションズに集約させる方針を打ち出した。11月9日にNTT(持ち株会社)が発表した中期経営戦略で盛り込んだもので、NTT東西地域会社が主にネットワークインフラの構築・運用を、NTTコムがこのインフラを使った通信サービスや付加サービスの提供を担うことが計画の主眼だ。

 「NTTコムは上位サービス」「NTT東西はインフラ中心」という新たな役割分担によって、法人向けでは「顧客へのワンストップ対応や、情報システムから通信までのトータル提案の強化を図る」(NTTの和田紀夫社長)という狙いがある。まず来年夏をメドに、法人顧客のアカウントをNTTコムに集約させる施策から手をつける計画だ。

 今回の経営戦略ではまず、NTTが2007年度下期の商用化を目指す「次世代IP網」の構築をNTT東西に担当させることを明言。一方、法人向けサービスや、インターネット接続などのIP系サービスは、NTTコムに移管させる方針を打ち出した。ただし、地域密着型のサポート力が求められる中小企業の担当は、津々浦々に支店網を持つNTT東西が引き続き受け持つ。

 NTTコムへのアカウント集約に続く法人向けの施策はまだ具体化していないが、「NTT東西が本社で持つ(大手企業向けの)法人事業部門を、丸ごとNTTコムに移管させることも選択肢」(戦略立案を指揮した、NTTの有馬彰取締役)にするなど、思い切った事業再編も検討するという。

 ここで注目に値するのが、NTTコムは引き続きソリューション強化路線をほぼ踏襲できる点だ。戦略では「ソフト・情報システムソリューション事業は、NTTコムや(NTTコムウェアなどの)ソフト事業会社と連携を強化しながら、NTTデータが中心になって対応する」としている。ただし、NTT持株会社としては、NTTコムのソリューション事業に特に制約を課す考えはないという。

 「提案活動で、NTTデータとNTTコムが競合することは、必ずしも問題ではない。全体としてはNTTグループのシェアを高める効果がある」(有馬取締役)と見ているからだ。このため、「同じサービスの価格を叩き合うような、あまりに無意味・非効率的な競合は避けてもらう」(有馬取締役)べく、NTTデータとの連携強化を求めているものの、今回の経営戦略では、NTTコムにソリューションの強化路線にお墨付きを与えた格好だ。

 ネットワークに絡むソリューションとはいえ、ICカードや決済システムなどNTTコムが強化する分野は、NTTデータの土俵でもあり、今後も2社の競合は続きそう。今回の経営戦略は、ソリューション事業における“2頭体制”を公認したものともいえそうだ。

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