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 「金融庁の認可を得るという厳しい作業が待っているが,来年4月には銀行サービスをスタートさせる」---。楽天の代表取締役 副社長執行役員の國重惇史氏は,2005年11月8日に開催された「金融ITイノベーション2005」セミナー(主催:日経BPセミナー事業センター)の基調講演で,同社の金融事業戦略の一端を明らかにした。

 ソニー銀行,イーバンク銀行,ジャパンネット銀行などの新興の銀行がいずれも既存の有力金融機関の出資を受けた例を引き合いに出し,「銀行業はきちんとした後ろ盾がないと難しく,楽天の100%出資ではできないだろう。どこと組むかは最終の調整中」と語った。すでに調整のめどはついた模様で,「遠くない将来に正式に発表する」という。

 銀行業参入の狙いとしては,流動性資金の確保を挙げた。インターネット・モール「楽天市場」やオンライン旅行予約サイト「楽天トラベル」などの同社の合計3000万会員の流通/サービス決済の3~4割を銀行振替に誘導し,流動性資金として確保。先行して事業化した楽天クレジットや楽天KCなどのノンバンク事業での資金調達コストが,今後の金利上昇に伴い膨れ上がるのを抑制する。

 また,保険業についても,保険業法の改正に伴い来年4月に新設される「少額短期保険業者」への登録を目指して準備を進めていることを明らかにした。同制度は取扱商品を少額・短期・掛け捨てに限定し,預金・国債といった安全資産での運用に限定することなどが決まっているものの,細目は固まっていない。制度の整備をにらみながら,事業化に取り組む格好だ。「シナジー効果としては銀行業とクレジットほどではないが,証券サービスのように楽天ブランドを生かした事業展開をしていく」。銀行業と同様に,「単独ではなく,他社と組む」計画で,ある程度の規模になったら免許制の正規の保険会社へ移行する2段構えである。
  
 ショッピング・モールに,証券,クレジットカード,信販,銀行,保険などの金融サービスを付加し,一つのIDとパスワードでサービスを使えるようにしてグループのシナジー効果を引き出す。TBSへの経営統合提案でメディアの統合を目指す楽天だが,金融サービス分野でも“ネット上の金融コングロマリット”を見据えて攻勢に出る。