ユニクロ ダイレクト事業部マーケティングチームリーダー 竹上創氏
 フリースなどの衣類を販売するユニクロがインターネット通販を開始してから5年が経過した。ここ2年ほど前年度の売り上げを40%上回る伸び率を見せている。店舗では販売していないタオルや枕なども扱っており、リピーターも多い。ネット事業を担当するダイレクト事業部マーケティングリーダーの竹上創氏にネットの戦略を聞いた。

■ネットで購入しているのはどんなユーザーなのか。

 実際に購入した層を見ると、女性の比率が約7割を占める。年齢層は10代から60代までと幅広いが一番多いのは30代だ。それらのユーザーのうち、約6割程度が2回以上購入しておりリピーターといえる。

■売り上げはどれくらいか。

 昨年1年間の売り上げは約72億円。ここ2年ほどは前年度40%程度で伸びている。ネット独自の商品の売り上げも2割近くを占めている。

■ネットの戦略とはどういうものか。

 まず基本的な考えは、ネット事業単独で利益を出すということだ。そのため店頭の広告や単に補完的な位置づけとしては見ていない。お客さんに対しては意味のある付加価値を提供する。  ユニクロはリアルの店舗が全国に700あり、ネットのユーザーの約7割が30分以内に店舗に行ける。そのためネットで商品を確認してから、店舗で購入するユーザーも多い。最大の競争相手は店舗だが、ネット独自の販売方法をとることで、店舗からユーザーを取っているという感じはなく、むしろ全体として販売機会が増えている。

■当初から戦略は変わっていないのか。

 大きくは変わらないが、2002年くらいまでは、「店舗と同じものを同じタイミングで、同じ値段で売る」という販売方法だった。しかしリアルの店舗が増えて、ネットの伸びが鈍ってきた頃から、違う方法を考え始めた。実際の店舗とどう差別するか試行錯誤の結果、1年ほど経って勝ちパターンが見えてきた。今ではネット事業に独自のMD機能を持ち、ネット独自の商品企画を実施して実際の店舗との差別化も図るようになっている。

ネットでは、店舗では扱っていないタオルや枕なども販売している

■具体的にネットならではの販売方法とはどういうものか。

 大きく「商品」と「販売」で差別化を図っている。まず「商品」では、ネットでしか扱っていない商品や実際の店舗では扱いにくい商品を販売している。ネットでしか扱っていない商品では、シーツや枕、タオルなどの「HOME商品」がある。また、XXLやXSといった特大サイズや小さいサイズの商品を扱い、実際の店舗にはない品揃えを実現している。

■どうしてシーツや枕なのか。シーツや枕は実際に手にとって確認できないのはデメリットではないのか。

 正直そうは考えていない。販売できそうな製品をいろいろ検討した結果だ。  タオルやシーツはどこでも購入できるが、それほど品揃えが豊富な訳ではない。実際の店舗では場所も取るし、洋服などに比べ回転率も悪い。店舗ではなかなか扱いにくい商品だ。そのため、いろんなサイズや色、大きさを揃えることでユーザーに対して大きなメリットを提供できると考えた。  もう一つは、スペックだ。タオルやシーツは生地や糸の種類などが使い心地に大きく影響する。そういう細かい情報は店頭の広告やディスプレイの説明文だけではとうてい伝わらない。ネットだからこそ多くの写真や文字を使って伝えられると考えている。

■販売面での特徴というのは。

 例えば、イベント的な商品のネットでの先行販売だ。最近ではキャラクター商品や女性誌とのコラボレーション商品などは注目度が高い。ネットであれば雑誌の発売日に合わせて発売できる。  また、反射材を使用したアウターなど目立たないが新機軸の商品などは、店舗にはそれほど数はおけない。そのため店舗でのスペースも小さくなり置いても目立ちにくい。ネットでこそ生きる商品といえる。ネット販売で様子を見て、全国の店舗に展開することもある。子供向けの服の一部も当初ネットでの独自企画だったが、売れ行きを見て店舗でも扱うようになった。

■ユーザーにサイトを訪れてもらうためにどのような工夫をしているのか。

 一番大きいのはメルマガだ。通常のメルマガ以外に、何かあれば「号外」を出している。期間限定発売だったり、あるいは先行販売などだ。これによってメルマガの読者を集客している。また、読者のみが閲覧できるサイトを設けるなど、読者にメリットがあるメルマガを提供している。