ジャストシステムは2005年10月31日,かな漢字変換ソフトの新版「ATOK 2006」を発表した。ユーザーの入力操作を基に,新たな単語学習を提案する機能などを盛り込んだ。2006年2月10日に出荷を開始する。価格は8000円。

 学習の提案機能は,辞書に登録されていない語句を,複数の単語をつなぎ合わせて入力したときに働く。例えば,企業独自の組織の略称を入力する場合。「営業推進」を「営推」などと略しているときだ。通常こうした文字を入力する場合,「営業」と入力して確定してから「業」を削除し,次に「推進」と入力して「進」を削除するといった手順を踏む。ATOK 2006でこの手順で文字入力をすると,「進」を削除した直後に「“えいすい”から【営推】に変換できるようにしますか?」というメッセージがツールチップで表示される。ここでShift+Enterキーを押すとこの単語が辞書登録され,次回からは「えいすい」で「営推」に変換できるようになる。

 さらに,日付の入力を支援する機能も追加した。「きょう」や「あす」と入力すれば,「2005年10月31日」のように当日や翌日の日付が入力できる。また「2005/10/31」と入力して変換すると,「平成17年10月31日」のように和暦に変換した候補を提示する。曜日も自動的に算出してくれる。また,単語の一部を基にそれに続くフレーズを提示する「推測候補モード」も搭載した。例えば「まこと」と入力してCtrl+変換キーを押すと,「誠にありがとうございました」「誠に恐れ入りますが」などが表示される。過去に入力したフレーズを提示する機能はこれまでもあったが,今回はそれに加え,一般的によく使われる表現も表示されるようになった。

 同時に,ワープロソフト「一太郎 2006」と描画ソフト「花子 2006」も発表した。一太郎 2006は,作成した文書の提出前に便利な機能を簡単に呼び出せる「提出確認」というモードを追加した。改ざんや印刷を禁止する制限をかけたり,文書校正を実行するといった機能のアイコンが目立つように配置される。全ページを並べて表示して文書の一覧性をチェックすることも可能になった。花子 2006には,図にコメントを挿入したり,プレゼンテーション中に図の一部を拡大表示したりする機能を追加した。出荷開始日はいずれも2006年2月10日。価格は一太郎 2006が2万円,花子 2006が9800円。

 なおこの二つのソフトをめぐっては,松下電器産業の特許を侵害しているとして係争が続いていた。知的財産高等裁判所がジャストシステム勝訴の判決を言い渡したことで幕を閉じたが「一連の裁判によって,両ソフトの売り上げに影響は出ていない。マイナスもあったが,逆にプラスに働いた面もあった。総合すると,大きな変化はない」(同社の浮川和宣代表取締役社長)。