米国の最高裁(The US Supreme Court)はこのほど,米MicrosoftがWebブラウザの特許を巡って米Eolas Technologiesと争っている訴訟に関して,Microsoftの上告を却下したと発表した。最高裁はその理由について説明していない。

 Eolasとの訴訟は,Microsoftにとってジェットコースターのような存在であった。Eolasが初めてMicrosoftを訴えたのは1999年のことであり,MicrosoftのInternet Explorer(IE)によって,Eolasに独占的にライセンスされている米カリフォルニア大学の持つ特許が侵害されたと主張していた。この特許は,メディア・プレーヤのプラグインのような埋め込み型プログラム・オブジェクトにブラウザ上でアクセスするシステムを記述したものだ。2003年の審理では,陪審団はMicrosoftに対して5億2100万ドルの損害賠償を払うように言い渡したが,Microsoftは上告するとともに,特許が無効であるという訴えを起こしていた。2005年3月には,米連邦控訴裁判所は特許の有効性に関する審理の差し戻しを言い渡している。

 ところが意外なことに,米特許商標庁(US Patent & Trademark Office,USPTO)は7月に,先行事例がたくさんあるにもかかわらず,Eolasの特許が有効であると判断した。シカゴ地方裁判所は,依然として特許の有効性に関する審理を続けている。今回の却下された上告は,Microsoftが5億21000万ドルをEolasに支払うか否かを争うものであり,損害額の計算方法について審理を求めたものであった。5億2100万ドルという判決は,IEを含むWindowsの全世界売上高に基づいて計算されたものであり,Microsoftは特許が有効なのは米国だけなのだから,米国での売り上げに基づいて計算されるべきと主張していた。

 Microsoftの広報担当者は「われわれは今後も差し戻し審理で争っていきます。われわれの勝訴が間違いないと確信しています」と語っている。審理のスケジュールなどはまだ決まっていない。一方のEolasも,訴訟に勝つ自信があるようだ。Eolasの弁護士は「われわれは,特許商標庁の判断と同じように,今後の裁判でも前回と同じ審理結果が出されると信じています」と語っている。

 Eolasの特許は,Web開発者のコミュニティに大騒ぎを引き起こしている。なぜならこの特許は非常に広範囲であり,恐ろしく多くの企業や人々に影響を与えるものだからだ。非常に稀なことであるが,多くの業界団体やW3C(World Wide Web Consortium)などが,Eolasの特許が業界に負の影響を与えるとして,Eolasの特許を無効にしようというMicrosoftの取り組みを支持している。W3Cは「Eolasの特許は,Web標準に基づいてデザインされた何百万という重要な既存のWebページに対して,破壊的な影響を与えるだろう」と主張している。