TBSとの統合提案の真意を,改めて語る楽天の三木谷社長
TBSとの統合提案の真意を,改めて語る楽天の三木谷社長
[画像のクリックで拡大表示]

 楽天は10月26日,緊急記者会見を開催し,共同持ち株会社による統合を提案している東京放送(TBS)の公開株式を,25日までに19.09%まで買い増したことを明らかにした。TBSはかねてから楽天に対して株の買い増しをしないよう求めてきた。しかし,楽天の三木谷社長(写真)は「提案を成就するために資本のルールにのって買い増した」と説明。統合提案の交渉に関して楽天の手詰まり感も見える中,実力行使に出た格好だ。

 三木谷社長は,株式買い増しの説明と合わせて,改めてTBSとの統合提案の真意を訴えた。三木谷社長は「テレビとネットを取り巻く環境が大きく変化している。テレビはネットにつながり,ネットはテレビにつながる時代がやってくる。楽天はこれまでも将来を予測してビジネスを作ってきた。今は絶好の機会。テレビとネットの企業が組むことで,この機会をいち早くとらえたい」と説明した。

 三木谷社長が説明の中で何度も言及したのが,アップルのiPodによる音楽業界の構造変化だ。「変化が起こる時は一気に来る。日本でも音楽配信がはじまったじゃないですか。20年かかると思ったものは3年でできてしまう。それがデジタル革命のスピード感」(三木谷社長)と,TBSとの交渉の進展の遅さにいらつく様子も見せた。

 三木谷社長自身も,2年前は放送と通信の融合に懐疑的だったと打ち明ける。しかしブロードバンドの普及や,USENと共同で立ち上げている動画配信サービス「ShowTime」などの経験を経て,考え方が急速に変わったという。「テレビとネットの融合も始まれば速い。たぶん3年後には,三木谷の言ったことが正しかったということになるのでは」(三木谷社長)。

 とはいえ楽天は,テレビとネットの融合の形について具体像を明確には説明していない。TBS株の大量保有を明らかにした記者会見で(参考記事),テレビからWebに誘導することで新たな広告収入を確保することや,テレビ・ショッピングとネット通販の連動などに触れた程度。今回も「TBSに提出した提案書にはしっかり書いてあると考えている」(三木谷社長)とし,明確な説明を避けた。

 こうした中,三木谷社長がテレビとネットの融合の動きを「マスメディア」と「マイクロメディア」という言葉を使って説明する一幕もあった。「これまでテレビは“マスメディア”であり,ネットは“マイクロメディア”だった。今後は両者の境界線が曖昧になっていくのではないか。これをテレビ局の人には,これをチャンスと捉えてほしい」(三木谷社長)と訴えた。