ソリューションプロバイダのNSWとソフト開発のナムザック・ジャパンは共同で、携帯電話網を使った無線IP電話サービスに参入する。携帯電話上で動作する独自のソフトフォンを提供し、携帯電話会社が提供するパケット通信サービス上で音声通話を実現する。法人を対象に2005年12月からサービスを提供する計画で、広域で利用できるパケット通信サービスを使った日本初のIP携帯電話サービスという。

 ナムザック・ジャパンが携帯電話会社からパケット通信回線の卸売りを受けることで、パケット通信料を含めた通話料を月額5000円以下の定額制にする方針だ。また交換機サーバーの運営や法人へのサービス販売などはNSWが受け持つ。サービス開始当初は今回のソフトを利用するグループ内でしか通話できないが、固定/携帯電話やIP電話との発着信サービスを提供するため、フュージョン・コミュニケーションズが事業協力する方向で協議しており、来年の初めごろにも実現できる見通しとしている。

 また、当初はボーダフォンの携帯電話サービスだけに対応し、ソフトが稼働する端末も1機種に限られる。ただし対応機種は今後増やしていくほか、他の携帯電話会社との交渉も進めていくとしている。既にオリックス・グループや運輸業企業など複数社が導入を内定もしくは検討中という。事業化後1年で10万ユーザーを獲得し、年間30億円の売上高を見込んでいる。

 サービスに使うソフト「Arrowfone」はナムザック・ジャパンが供給を担当する。同社の兄弟会社であるカナダのナムザック・ラブズが開発したもので、パケットの遅延や揺らぎの影響を受けにくいほか、ダウンロードサイズが75kバイトと小さい点が特徴。固定通信や無線LANよりもパケットの遅延や揺らぎが大きい携帯電話のパケット通信でも、十分な音質を維持できるという。

 NSWは端末間の発着信を制御するサーバーの運営や営業、顧客サポート、Arrowfoneの日本語化やカスタマイズなどを受け持つ。すでにデータセンター内に10万ユーザーを収容できる設備を用意したほか、今回のIP携帯電話事業のために10月1日に社長直轄の「Arrowfoneプロジェクト」を発足させた。組込みソフト事業のノウハウを生かして、サービス事業を新たな収益源に育てたい考えだ。

 また、ナムザックと交渉を進めるフュージョンは、今回の新サービスと既存のIP電話サービスを組み合わせることで、オールIPによる法人向け「FMC(フィクスド・モバイル・コンバージェンス=無線・有線通信の融合サービス)」事業の実現性を探るとみられる。総務省の許可が必要だが、IP携帯電話で同様の仕組みが提供できれば、オフィスから屋外まで同一番号、同一端末でシームレスに発着信できるFMCサービスが実現できる。

【お詫びと訂正】 当初公開した記事には、『フュージョンがIP携帯電話サービスに参入へ』とのタイトルで、「フュージョンがサービスへの参入を計画している」として報じましたが、フュージョンは事業協力の方向で検討しているものの、今回のサービス提供元はナムザック・ジャパンとNSWになります。また「VoIP機能を組み込んだ専用の携帯電話機を用意し」としましたが、現時点では携帯電話用のJavaソフトをダウンロードすることでサービスを利用します。お詫びして訂正します。

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