KDDIと東京電力は10月13日、通信事業での包括的な提携を発表した。具体的には、KDDIと東電の子会社であるパワードコムの合併、FTTH(ファイバ・ツー・ザ・ホーム)事業における東京電力とKDDIの統合サービス提供について基本合意した。KDDIの小野寺 正社長は提携の目的を、「NTTグループに対向しうる企業グループを早期に作り上げるため」と説明する。

 KDDIは来年1月1日付けで、パワードコムを吸収合併する。合併比率はKDDIが1、パワードコムが0.0320。KDDIは、パワードコムが大きなシェアを誇る広域イーサネット・サービスや、パワードコムが敷設したファイバ・ネットワークを手中に収めることで、固定データ通信サービスを強化する。同時に、NTT依存だったアクセス・ネットワーク用のダーク・ファイバを東電から安価に入手する体制を確立し、KDDIのコンテンツ配信ネットワークと組み合わせることで、価格競争力のある統合サービスを提供する。FTTH事業については、KDDIが設備投資の一部を負担することも検討する。また、FTTH事業を東電から分離してKDDIに統合することについても検討を始める。

 合併されるパワードコムの中根 滋社長兼CEO(最高経営責任者)は今回の基本合意を受けて、「就任した1年前にはM&Aの対象にさえならないほどの状況だった。合併で基本合意できたことは、これまで進めてきた合理化、業務プロセスの改善の成果」と説明。「KDDI/パワードコム・グループで、いつかNTTを凌駕する」と打倒NTTグループへの意気込みを語った。

 ただし、現時点では合併することに基本合意しただけで、具体的な内容は未定。来週にも合併準備委員会を設け、詳細を詰めていく計画だ。パワードコムの中根社長の処遇をはじめ、組織・人事についても、現段階では未定としている。

 また、フュージョン・コミュニケーションズ、ドリーム・トレイン・インターネットなどパワードコムの子会社/関連会社については、今回の提携の対象外。合併期日までに東京電力の方針により、東京電力もしくは第三者に譲渡する。

 パワードコム以外の電力系地域通信事業者については、小野寺社長は「折衝の必要がある。PNJ(地域通信事業者10社のグループ)の旗振り役であるパワードコムの意見を聞きながら話を進めていく」とした。中根社長も、「対NTTを意識すれば、協調路線しかあり得ない」と、さらなるグループ強化に意欲を見せた。