米IBM社は2005年10月12日(現地時間),同社が製品として販売してきた開発プロセス「Rational Unified Process(RUP)」の一部をオープンソース化すると発表した。統合開発環境「Eclipse」の開発などを手がけるEclipse Foundationに,RUPに関するプロジェクトの設置を提案した。Eclipse Foundationでの審議を経て,数ヶ月後には正式プロジェクトとして登録される見込み。

 RUPは,米Rational Software社(2003年にIBMが買収)が開発した。ソフトウェア開発の手順やプロジェクトのメンバーに求められる役割などを定めており,これらを記述した文書(40MバイトほどのHTMLファイル)を販売してきた。RUPは大きく六つの要素で構成されており,今回オープンソース化するのはそのうちの一つ。最も中心的な要素である,反復開発に関する部分を公開する。また,このプロセスを自社に合わせてカスタマイズするための編集ツールも,併せてオープンソース化する予定。「ソフトウェアの開発現場には,これまで共通の用語が存在しなかった。今回のオープンソース化によってRUPが標準的な地位を確立し,共通語としての役割を担うことを期待している」(日本IBM Rationalブランド・マネージャーの渡辺隆氏)。なお,要求管理や構成管理など反復開発以外の部分は,従来通りIBMが販売を続ける。

 RUPのプロジェクトは,IBMのほか米Unisys社や,UMLの生みの親として知られるIvar Jacobson氏が設立した米Ivar Jacobson International社などで構成する。日本からは,NTTコムウェアが参加する。

 なおRUPと並んでよく紹介される「UP(Unified Process)」は,RUPとは別物である。UPは,Jacobson氏が提唱していた「Objectory」という方法論にUMLや反復型開発などの考え方を加え,Grady Booch氏やJames Rumbaugh氏などとともに作り上げたもの。RUPと重なる部分もあるが,異なる個所も多い。UPは書籍などによって既にオープンにされている。「UPは,開発プロセスの枠組みを定めたもの。RUPは枠組みだけでなく実践的な要素が数多く定義されており,現場に適用しやすい。その意味で,今回のオープンソース化には意味がある」(オージス総研 技術部ソフトウェア工学センター サイエンティストの藤井拓氏)。