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 日立製作所は10月3日、ノート・パソコン向けの小型指静脈認証装置の開発に成功したと発表した。容積が19.89ccと従来比20分の1で、今年度中には同装置を搭載したノートPCを製品化し、情報漏洩対策の強化を目指す法人に向けて販売を始める。

 指静脈認証は、指の静脈のパターンを識別することで本人を確認する技術。指に光を照射し、透過した光信号から指静脈のパターンを識別し本人のものと一致するかどうかを確認する。指紋認証に比べて、年齢など個人差の影響を受けにくいなどの特徴がある。

 ただ、従来の指静脈認証装置は、指に光を照射する発光ダイオード(LED)を実装する関係で、ノートPCに内蔵できるほど小型化(薄型化)できていなかった。そこで新たに開発した装置では、従来は指上部や側面に配置していたLEDを静脈情報を読み取るセンサーと同じ底部に埋め込む「フラット型方式」を採用し、薄型化した。指内部での散乱光を読み取る。センサー部に入り込む反射光の影響を減らす仕組みを併せて実装することで、指の上や側面から照射した場合と同様に静脈情報を読み取れるという。ノートPC用に特化したことで、装置の回路の一部にできるだけPCの回路を使うようにするなどの工夫を施したことも薄型化に貢献した。プロトタイプの外寸は、39×34×15mm(DWH)だ。

 精度について宮武孝文 中央研究所知能システム研究部研究主幹は、「照射方式の違いによる精度の低下は理論上はない」と説明。「まだプロトタイプが完成した段階で十分な評価ができていないが、研究室の少人数での評価の結果、指紋認証より高精度にできるとことは確認できている」という。

 今後はさらに4分の1~5分の1のサイズへの小型化を進め、2008年以降には携帯電話などへの埋め込みを狙う。