「見守り対象者」が持つICタグ
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緊急通報時に送られてくるメールの例
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 NTTデータ,東急セキュリティ,イッツ・コミュニケーション3社は9月30日,横浜市で実施した「子供見守りサービス」の実験結果を公表した。子供見守りサービスとは,子供にICタグを持たせて非常時に通報させたり,保護者が子供の居場所をチェックしたりできるようにするサービス。実験の結果,実際のサービスとして提供するには,コストや“誤通報”などが問題になることが明らかとなった。

 子供見守りサービスには「通報駆けつけ」「登下校(見守り)通知」「居場所検索」---以上3種類のサービスが含まれる。通報駆けつけは,タグを持つ子供(同サービスでは「見守り対象者」と呼ぶ)がタグの通報ボタンを押すと,あらかじめ登録された近所の保護者(同サービスでは「駆けつけ支援者」と呼ぶ)および警備員が駆けつけるサービス。

 登下校通知は,見守り対象者が街中に設置されている「見守りスポット(ICタグの電波を受信するレシーバー)」の近く(30~50メートル以内)を通ると,保護者あてにその情報をメールで知らせるサービス。居場所検索は,見守り対象者が「いつ,どの見守りスポットを通過したのか。現在どのスポットの近くにいるのか」といった履歴をブラウザで閲覧できるようにするサービス。

 実験地域は,横浜市青葉区みたけ台地区のおよそ1平方キロメートルのエリア。その中に,見守りスポットを27台設置した。見守り対象者は188名の小学生。同地区のある小学校の全校児童の家庭を対象に同サービスに関するアンケートを実施し,参加希望者を募った。駆けつけ支援者として登録されたのは215名。いずれも,見守り対象者の保護者である。

 実験期間は2005年4月5日から7月31日まで。その間,53回の緊急通報があったが,いずれも誤報だった。「鉄棒で遊んでいるときなどに,誤って押してしまったようだ」(NTTデータ 第三公共システム事業本部 市場開拓部長の堀間利彦氏)。そのたびに警備員などが実際に駆けつけていた。通報ボタンを数秒押し続けないと緊急通報が送られないようにすることで誤報の数は減少したが,実サービスに向けて一層の改善が必要だとする。

 今回は実験サービスだったので無償だったが,実際のサービスとして提供するには,コストが大きな問題になるという。特に,見守りスポットの設置にコストがかかるという。「レシーバーは量産されていないために価格が高い」(堀間氏)。設置場所も問題になる。「今回は参加者の玄関先などに置かせてもらったが,実際のサービスではそうはいかない」(同氏)。

 今後のサービス展開については現時点では未定。NTTデータなどでは,自治体や学校などの協力を得ながら,同サービスに関する議論を地域全体で行ってもらえるような取り組みを進めていきたいとする。

◎参考資料
アイセイフティ「子供見守りサービス」実証実験の結果報告について(ニュース・リリース)