今年2月10日に発売された一太郎2005。東京地裁は発売日直前の2月1日に、第一審判決を言い渡していた
今年2月10日に発売された一太郎2005。東京地裁は発売日直前の2月1日に、第一審判決を言い渡していた
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 ジャストシステムのワープロソフト「一太郎」とグラフィックスソフト「花子」が、松下電器産業が持つ特許を侵害しているとして製造・販売の中止を求めている裁判で、知的財産高等裁判所(806号法廷)は9月30日、東京地裁が出した第一審の原判決を取り消し、松下側のすべての請求を棄却する判決を下した。第一審、第二審とも訴訟費用は松下側がすべて負担する。ジャストシステムの全面勝訴となった。

 両社が争っていたのは一太郎、花子が搭載している「ヘルプモード」。一太郎や花子では、メニューの機能をより素早く起動できるよう、画面上部にボタンを配置しており、ヘルプモードはそれらの機能を表示するための機能。具体的にはマウスの絵柄の横に「?」マークが記されたボタンをクリックし、形状の変わったマウスポインターをほかのボタンに持っていき再度クリックすると、そのボタンの機能をバルーン表示する。
 一方、松下が持つ特許を要約していえば、「機能説明をさせるための第1アイコンを押し、さらに第2アイコンを押すことでその機能を表示する」というもの。
 今年2月1日、東京地方裁判所は、ヘルプモードを起動するボタンを「アイコン」に相当すると判断し、ジャストの特許侵害を認める判決を下していた。「一太郎2005」「花子2005」の発売を2月10日に予定していたジャストに大打撃を与える判決に、大きな注目が集まった。
 ただし、東京地裁の判決には仮執行宣言がついておらず、ジャストは予定通り新製品を発売。発売2日前の2月8日に東京高等裁判所に控訴し、4月1日からは東京高等裁判所に特別支部として設置された、特許訴訟や知的財産権訴訟を専門に扱う知的財産高等裁判所に係争の場が移された。
 その後、知財高裁は同案件を「社会的影響が大きく、早期の司法判断が必要」とし、初の特別部(いわゆる大合議)に選定。通常、3人の裁判官で行う審議を5人に増やし、今後増える可能性の高いユーザーインタフェース(UI)特許訴訟に備え、司法判断の統一を急いでいた。
      
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【裁判のこれまでの経緯】
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2月1日 東京地方裁判所が、松下が持つ特許をジャストが侵害しているとの判決を下す
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2月8日 ジャストが東京高等裁判所に控訴
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2月10日 ジャストが「一太郎2005」「花子2005」を発売
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3月2日 ジャストが裁判とは関係ないとしながらヘルプモード起動ボタンのデザイン変更ツールを公開
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4月1日 知的財産高等裁判所稼働
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4月25日 知財高裁にて第一回口頭弁論
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5月9日 知財高裁が初の大合議部として同訴訟を選ぶ(ここで裁判長は第一部の部長で、所長でもある篠原勝美判事に代わる)
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6月3日 大合議部のもと第二回口頭弁論
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7月15日 第三回口頭弁論
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9月30日 知財高裁がジャストシステム勝訴の判決
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