松下電器産業の有高明敏・ネットワーク開発センター長
松下電器産業の有高明敏・ネットワーク開発センター長
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 松下電器産業とパナソニック コミュニケーションズは9月29日,2006年3月までに高速電力線通信用モジュールと専用LSIの量産を開始すると発表した。また,今年8月から評価ボードとスタートアップ・ユーティリティ(ソフトウエア)を出荷開始していたことも明らかにした。

 LSIはデータ伝送を制御するMAC部とCPUを内蔵。変調方式には松下が独自開発した「Wavelet OFDM」を採用し,通信速度は最大170Mビット/秒である。QoS(quality of service)機能や,128ビットのAES暗号化方式も搭載した。また,イーサーネット・コントローラを内蔵しており,イーサーネットと電力線通信のブリッジ機能も容易に実現できる。

 価格については明言していないが,将来的にはホーム・ネットワーク市場で競合する無線LAN以下にする意向だ。「冷蔵庫や洗濯機に内蔵することを考えれば無視できるくらい安くしたい。ワンコインが目標」(松下電器産業の有高明敏・ネットワーク開発センター長)とした。ちなみに,8月から出荷している評価ボードは約10万円である。

 総務省中の「高速電力線搬送通信に関する研究会」では実用化の最終的な結論が出ていないが,「年内から年明けには規制緩和の手続きに入れるはず。来年の今頃には商品を販売している状況にしたい」(有高センター長)と説明。9月26日に開催された直近の研究会での許容値提案については(参考記事),「もう少し緩和してほしいというのが本音,だが,当社の製品ならクリアできる」(有高センター長)と語った。

 発表会では,10月4日から幕張メッセで開催する「CEATEC JAPAN 2005」で実施する公開実験の内容についても言及した。6台の電力線通信モデムを使い,サーバーからテレビへのHDTV伝送,IP電話,Webカメラでの映像配信の三つを,実際の電灯線を使って行う。「電力線通信の実証実験ではHDTV伝送だけが通例。今回公開するトリプルプレイの実験は国内では初めて」(有高センター長)。

(山根 小雪=日経コミュニケーション